重工業業界を徹底研究！仕事内容や年収・企業比較も解説

ものづくりの基盤を支える重工業業界は、日本の経済を牽引する重要な産業です。

しかし、その仕事内容や年収は企業によって大きく異なるため、詳しく理解することができていない就活生も多いでしょう。

そこでこの記事では、重工業業界の仕事内容や年収、主要企業の比較まで徹底的に解説します。

 

重工業業界とは？

重工業業界とは、社会のインフラや産業の根幹を支える巨大な機械や設備を製造・建設する産業群のことを指します。

就活生の中には、「重工業＝古い業界」「地味で堅そう」といったイメージを抱く人も少なくありませんが、実は宇宙開発や環境分野のような最先端の技術が集まるダイナミックな分野でもあるのです。

代表的な企業には三菱重工業や川崎重工業、IHIなどがあり、鉄道車両、船舶、発電設備、防衛装備といった国家規模のインフラに関わる製品を数多く手がけています。

こうした企業では、設計から生産、営業、施工管理に至るまで幅広い職種が存在し、理系だけでなく文系の学生にも活躍のチャンスがあるでしょう。

重工業業界の魅力は、目立たなくとも社会を支えているという点にあります。企業研究を通じて、自分に合った職種や役割を見つけていくとよいでしょう。

重工業業界の分類

重工業業界と一口に言っても、その中にはいくつかの専門分野があります。

ここでは、その代表的な4つの分野について詳しく紹介します。

1. 鉄道車両分野
2. 船舶分野
3. 防衛装備分野
4. 発電所建設分野

① 鉄道車両分野

鉄道車両分野では、新幹線や通勤電車などの設計・製造・整備を行います。人命を預かるという性質上、安全性の確保が最も重視される分野です。

鉄道車両は一度導入されると長期にわたって使用されるため、高い信頼性が求められるのが特徴です。さらに、車両の軽量化や耐久性向上のために、最先端の素材や技術が導入などを行なっています。

また、設計や開発に携わる職種では、精密な計算や地道な検証作業が不可欠となります。

② 船舶分野

船舶分野は、タンカーやコンテナ船といった大型船の設計や建造を担っています。海上輸送は国際貿易に欠かせない手段であり、船舶の品質が経済全体に与える影響は非常に大きいです。

この分野では、流体力学や構造力学などの専門知識が求められる一方、船内の快適性や省エネ性能への配慮も必要です。海外の顧客とやり取りすることも多く、英語力や異文化理解が役立つ場面もあるでしょう。

大規模でダイナミックなものづくりに興味がある人にとっては、大きなやりがいを感じられる分野です。

③ 防衛装備分野

防衛装備分野では、戦車やミサイル、潜水艦といった防衛機器の開発と製造を行います。この分野の特徴は、技術水準の高さと情報の機密性の高さです。

民間向け製品とは異なり、非常に厳格な基準に基づいて製造されるため、精度の高い技術力が求められるのが一般的です。また、数年単位の長期プロジェクトも多く、粘り強さとチームワークが大切です。

目立つ存在ではないかもしれませんが、国家の安全を陰から支えるという大きな責任と誇りを持てる仕事でしょう。

④ 発電所建設分野

発電所建設分野は、火力、原子力、水力といった各種発電所の設計や建設を担います。現代社会においてエネルギーの安定供給は欠かせない事業の一つです。

また、プロジェクトの多くは国内外の複数企業と連携して進めるため、調整力や工程管理の能力も不可欠です。さらに、安全基準の遵守や環境への配慮といった社会的責任も伴います。

大規模プロジェクトに関わりながら、社会を根底から支える実感を得たい方に適した分野です。

重工業業界の主要企業

重工業業界には、日本を代表する大手メーカーがいくつもあります。それぞれが高い技術力と社会的信頼を持ち、多様な事業領域で活躍しているのです。

ここでは、業界内でも特に注目度の高い5社について、それぞれの特徴を紹介します。企業ごとの強みを知ることで、志望動機や企業選びのヒントにもなるでしょう。

1. 三菱重工業株式会社
2. 川崎重工業株式会社
3. 株式会社IHI
4. 三井E&S株式会社
5. 住友重機械工業株式会社

①三菱重工業株式会社

三菱重工業は、日本最大級の総合重工メーカーです。エネルギー、防衛、航空宇宙など、幅広い分野で事業を展開しており、国内外からの信頼も厚い企業といえるでしょう。

発電設備や航空エンジンの分野では世界でも高いシェアを誇っており、大規模プロジェクトに携わる機会も豊富です。理系学生に人気がある一方、事務系職種の採用も積極的に行っています。

社会貢献度の高い仕事にやりがいを感じる方にはぴったりの企業です。

②川崎重工業株式会社

川崎重工業は、鉄道車両や航空機、船舶、バイク、産業用ロボットなど多彩な製品を製造する重工メーカーです。とくに鉄道やバイクではブランド力があり、性能とデザインの両面で評価されています。

グローバル展開も積極的で、海外志向の強い人に向いているでしょう。職場は穏やかで自由度が高く、若手でも挑戦できる環境が整っています。

自分の専門性を活かしながら、多様な分野で経験を積みたい人におすすめです。

③株式会社IHI

株式会社IHIは、航空エンジンやエネルギープラント、宇宙関連の装置などを開発する技術集団です。旧・石川島播磨重工業から社名を変更し、現在では最先端の技術開発が強みにしています。

なかでも航空宇宙分野では高い実績を持ち、世界的な評価を受けています。

IHIは社員一人ひとりを大切にし、専門性を伸ばす文化が根づいているため、技術力を深めながら成長したい方に適した企業といえるでしょう。

④三井E&S株式会社

三井E&S株式会社は、旧・三井造船の流れをくむ企業で、現在は舶用エンジンや海洋構造物などの分野で技術を発揮しています。

伝統を重んじつつも、新しい領域への挑戦を進めており、企業としての変革を肌で感じられるでしょう。

若手にも積極的に仕事を任せる風土があり、自分の力で企業を動かしたいという思いを持つ人には魅力的な環境です。

⑤住友重機械工業株式会社

住友重機械工業は、産業機械や精密機器、建設機械など多岐にわたる製品を展開している企業です。なかでも減速機や射出成形機の分野では国内外で高いシェアを誇り、製造業の中核を支えています。

安定した経営基盤を持ちつつ、地道に技術を磨きたい方にとっては最適な職場でしょう。人材育成に力を入れており、落ち着いた社風のなかで着実にキャリアを積むことができます。

重工業業界の年収ランキング

重工業業界に関心のある就活生にとって、年収は企業選びの重要な判断材料のひとつです。この業界は高い専門性や責任が求められるため、平均年収も比較的高水準といえるでしょう。

たとえば、三菱重工業や川崎重工業、IHIなどの大手企業では、平均でおよそ700万円前後の年収が見込まれます。

ただし、これは職種や勤続年数、勤務地などによって大きく変わるため、あくまで目安として参考にしてください。

技術系の総合職では高めの給与が得やすい一方で、事務系や現場作業職ではやや控えめになる傾向があります。

また、年収の数字に目を奪われがちですが、仕事内容のやりがいや働く環境もあわせて考慮することで、納得のいく企業選びにつながりますよ。

企業名	平均年収（参考）	出典
住友重機械工業株式会社	約705万円	OpenWork
三菱重工業株式会社	約679万円	OpenWork
川崎重工業株式会社	約654万円	OpenWork
株式会社IHI	約614万円	OpenWork
三井E&S株式会社	約547万円	OpenWork

重工業業界の主な仕事内容

重工業業界では、製品づくりの設計から現場での施工まで、さまざまな職種が活躍しています。

ここでは、重工業業界の代表的な5つの職種について紹介します。

1. 設計職
2. 研究開発職
3. 生産技術職
4. 営業職
5. 施工管理職

①設計職

設計職は、製品や設備の構造を考え、図面にまとめる仕事です。安全性やコスト、製造しやすさなどを同時に考える必要があります。

重工業では扱うものが大きいため、ひとつの設計が社会全体に影響を与えることもあるでしょう。小さなミスが後工程に響くため、丁寧さと責任感が求められます。

ものづくりの土台を築く、やりがいのある仕事です。

②研究開発職

研究開発職は、新しい製品や技術を生み出すための仕事です。環境技術やAI、自動化など、重工業業界でも最先端の研究が行われています。

すぐに成果が出ないこともありますが、社会に新しい価値を届けられるのが魅力の一つです。地道な努力を続けられる人にとって、やりがいの大きな職種でしょう。

③生産技術職

生産技術職は、製品を効率よく安全に作るための仕組みを整える仕事です。作業工程や設備の改善、品質管理まで幅広く関わります。

現場の声を反映しながら工夫する場面が多く、実践的な知識と対応力が求められるでしょう。製造現場と設計・開発の橋渡し役として活躍したい方に適しています。

④営業職

営業職は、企業向けに製品やサービスを提案する仕事です。重工業では長期的な取引が多く、信頼関係の構築が重要になります。製品知識だけでなく、社内外の人との調整力や説明力も必要です。

顧客の課題を聞き出し、最適な提案につなげられたときに大きな達成感が得られます。

⑤施工管理職

施工管理職は、建設現場の進行を管理する仕事です。発電所や大型設備などの現場で、安全・品質・工程をコントロールします。

規模が大きい分、責任も重くなりますが、完成した現場を見たときの感動は格別です。

重工業業界で働く魅力

重工業業界で働く魅力は、安定性や年収の高さだけではありません。

ここでは、上記の他に重工業業界で働く魅力を3つ紹介します。

1. 社会インフラを支える使命感が得られること
2. 福利厚生が充実し、安定して働けること
3. グローバルに活躍できる機会があること

① 社会インフラを支える使命感が得られること

重工業業界では、鉄道や船舶、発電所など、社会の基盤を支える製品やサービスに携わることができます。

こうした製品やサービスは、社会的な意義が大きいため、仕事へのモチベーションを高く保ちやすい点が特長です。

さらに、長期間のプロジェクトが多く、チームで進める中で責任感や達成感も育ちます。日常の中で自分の仕事の成果を目にできることも、重工業ならではの魅力といえます。

② 福利厚生が充実し、安定して働けること

重工業業界には大手企業が多く、福利厚生や労働環境が整っている場合がほとんどです。

住宅手当や退職金制度、独身寮・社宅の完備など、生活面のサポートが充実しており、安心して働き始めることができるでしょう。

また、労働組合がしっかり機能している企業も多く、働き方改革の取り組みが進められている現場も見られます。

結婚や育児といったライフステージの変化に対応しながら働き続けたい方にとって、非常に働きやすい業界といえます。

③ グローバルに活躍できる機会があること

重工業業界では、海外との取引や現地プロジェクトへの参加機会が多く、国際的な視点で仕事ができる環境が整っています。

製品が世界中で使われるため、国際会議や視察、海外赴任などに関わることも珍しくありません。英語や他の言語スキルを活かしやすい職場であり、語学力を強みにできる点も魅力でしょう。

さらに、さまざまな文化を持つパートナー企業と連携する中で、異文化理解や国際的なビジネスセンスも自然と身につきます。

グローバルな舞台で挑戦したい学生にとって、大きなやりがいと成長が得られる業界です。

重工業業界で求められる人物像

重工業業界では、チームとの連携力や専門性の深さが特に重視されます。

ここでは、採用選考で評価されやすい人物像を3つ紹介します。自分自身の強みと照らし合わせながら、どのポイントをアピールできるかを明確にしていきましょう。

1. 論理的に考え、課題を解決できる人
2. 困難にも挑戦し、チームで協力できる人
3. 専門性を深め、学び続ける意欲がある人

①論理的に考え、課題を解決できる人

重工業の現場では、突発的な課題やトラブルへの対応力が日常的に求められます。

たとえば設計ミス、納期遅延、仕様変更などに直面した際、感情に流されず、何が本質的な原因なのかを冷静に見極めて行動できる人材が重宝されます。

企業は「状況を整理する力」「根拠に基づく判断力」「段階的な対応スキル」といった、いわゆる“論理的思考”を重視しており、

それは現場の技術者だけでなく、営業や調達などの非技術系職種でも重要視されているもの。実際のエピソードとともに「どのように考えて動いたか」を説明できると、面接時の印象も格段に上がるでしょう。

②困難にも挑戦し、チームで協力できる人

重工業のプロジェクトは数十人、時には数百人単位で動くこともあり、個人プレーでは成立しません。

たとえば設計部門と製造部門が密接に連携して仕様を調整したり、営業担当と技術担当が一体となって顧客対応を行ったりと、多くの局面でチームワークが求められます。

さらに、想定外の課題が発生する場面も日常茶飯事で、そうした状況に前向きに取り組む姿勢があるかどうかも見られているでしょう。

自分が過去にどのような役割を担い、何に直面し、どうチームに貢献したかを丁寧に振り返り、単なる“協調性”ではなく“主体的な協働”の姿勢を伝えることが鍵となるはずです。

③専門性を深め、学び続ける意欲がある人

重工業は長年のノウハウに支えられている一方で、時代の変化に合わせた革新が求められる分野です。

カーボンニュートラル対応、AIの活用、材料技術の進化など、技術トレンドの変化に対応できるかどうかは、企業にとっても死活問題。

したがって、大学や大学院で得た知識にとどまらず、入社後も継続して学ぶ姿勢があるかどうかが問われます。

たとえば「配属されたらこの分野を深めたい」「将来的に設計・製造工程の最適化に携わりたい」など、具体的な目標と学習意欲を伝えることができれば、面接官に強い印象を残すでしょう。

文系職でも製品や業務の知識を吸収する姿勢があれば、チームとの信頼関係を築くうえで大きな武器になります。

重工業業界のES対策

重工業業界のエントリーシート（ES）では、「社会貢献性」や「技術への関心」が重視される傾向があります。業界の特徴を理解し、それに即したアピールができるかどうかが選考突破のカギとなるでしょう。

1. 志望動機では業界の社会的意義を明確に書く
2. ガクチカでは技術力やチーム経験を具体的に書く
3. 自己PRでは専門性と業界理解を効果的に書く

① 志望動機では業界の社会的意義を明確に書く

志望動機では、「なぜこの業界なのか」という問いに対し、社会的意義を軸にして伝えることが求められます。

たとえば、「人々の生活を陰から支える仕事に携わりたい」といった想いを出発点に、インフラやエネルギー、防衛などに重工業がどう関与しているかを結び付けて説明してください。

企業への憧れや知名度だけでなく、自分の価値観や経験と業界の役割がどう重なるのかを明確にすると、説得力が増すでしょう。

② ガクチカでは技術力やチーム経験を具体的に書く

学生時代に力を入れたことでは、個人の実績だけでなく、チームでどのように貢献したかを重視してください。

重工業の仕事は多くの職種と協力して進めるため、他者と連携して課題を解決した経験が重要になります。

理系の学生であれば、研究内容や扱った技術を簡潔に触れると効果的です。成果よりも、取り組みの姿勢や行動が評価されやすいことを意識してください。

③ 自己PRでは専門性と業界理解を効果的に書く

自己PRでは、自分の強みが業界でどう役立つかを具体的に伝えてください。「論理的思考力」や「分析力」などのスキルは、エピソードとセットで示すことで説得力が増します。

また、業界の特性や企業の特徴を踏まえた内容にすることが重要です。単なるアピールにならないよう、自分の経験を通して何を学び、それをどのように仕事へ活かしたいかを丁寧に書いてください。

専門知識がある場合は、それを応用したいという意欲も添えると効果的です。

重工業業界の面接対策

重工業業界の面接では、他業界と比べて論理性や専門性が重視される傾向があります。

ここでは、面接時に特に意識したい3つのポイントを紹介します。

1. 自己分析の深さをしっかり伝える
2. チームでの役割を具体的に伝える
3. 専攻内容と実務の関係性を明確に伝える

①自己分析の深さをしっかり伝える

重工業業界では、自分自身の強みや価値観をどれだけ理解しているかが問われます。

「リーダーシップがあります」といった表現だけでは不十分で、その強みを発揮した場面や、そこから得た学びまで伝えることが大切です。

たとえば課題に直面したとき、どう考え、どう行動し、どのように周囲と関わったかまで語ると、説得力が増します。

加えて、その経験が志望動機とどのようにつながるのかを説明できれば、企業側に強い印象を残すことができるでしょう。

②チームでの役割を具体的に伝える

重工業では、部署を超えた連携や長期的なプロジェクトが多く、チームでの協働が不可欠です。そのため「協調性があります」といった抽象的な表現では伝わりにくくなります。

代わりに、自分がどのような立場で何を担い、どのように周囲と連携して課題に取り組んだのかを具体的に説明してください。

行動の背景や工夫した点、チームとしての成果なども盛り込むことで、実践力のある人材としての印象を与えられるはずです。

③専攻内容と実務の関係性を明確に伝える

理系学生にとって、研究や学びが実務にどうつながるのかを示すことは重要なポイントです。企業側は、単なる専門性よりも、それが現場のどんな課題に貢献できるかに注目しています。

たとえば、機械工学の知識が設計業務でどう役立つのか、データ解析の力がどのように製品開発や品質管理に貢献できるかなど、具体的な接点を示しましょう。

入社後にどう活躍していくかをイメージできるよう伝えることで、面接官の評価にもつながります。

重工業業界の全体像を理解しておこう！

重工業業界は、鉄道・船舶・防衛・エネルギーといった社会の根幹を支える分野を担い、各業界に特化した企業が存在します。

主要企業の特色や仕事内容、平均年収、やりがいなどを把握することで、企業選びや志望動機の説得力が格段に高めることができます。

この記事で、重工業業界の理解を深めて、選考を有利に進めていきましょう！