建築業界は今後どうなる?就職者数の推移や人手不足の原因を徹底解説!
建築業界に興味があるけれど、業界の実態や具体的な仕事内容が分からずに悩んでいませんか?人手不足や2024年問題などの話題もあり、不安を抱える学生も多いでしょう。
本記事では、建築業界の基本や主な業種・職種、業界が抱える問題や将来性のほか、求められるスキルまで詳しく解説します。
最後まで読めば、建築業界について理解が深まり、自信をもって挑戦できるはずです。建築業界に興味がある方や就職を考えている方は、ぜひ最後まで読んでください。
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建築業界の基本

私たちの社会や暮らしを形作る上で、建築業界はなくてはならない存在です。ここでは、そんな建築業界について以下の点を解説していきます。
建築業界の基本的な部分を理解することで、のちに紹介する課題や将来性についても理解しやすくなるでしょう。
①建築業界の役割
建築業界の最も基本的な役割は、人々が生活したり、働いたり、休んだりするための様々な建物を作ることです。住宅・オフィスビル・商業施設・学校・病院など、私たちの日常は建築物によって支えられています。
これらの建築物は、単に雨風をしのぐための構造物ではありません。安全性や機能性はもちろん、デザイン性や快適性、さらには周辺環境との調和まで考慮されて作られています。
建築業界は、社会のニーズや時代の変化を捉え、人々の暮らしをより豊かで安全なものにするという重要な使命を担っているのです。
また、経済活動を支えるインフラとしての役割も大きく、新たな建築計画は雇用を生み出し、関連産業の活性化にも繋がります。文化的な価値を持つ歴史的建造物の保存や再生も、建築業界が果たす大切な役割の1つです。
このように、建築業界は社会の基盤を形成し、人々の生活の質を高め、経済や文化の発展に貢献するといった多岐にわたる役割を担っています。
②建築業界と建設業界の違い
「建築業界」と「建設業界」はよく似ており、同じ意味として使われる場面も見られますが、厳密には意味する範囲が異なります。
建設業界は、建物だけでなく、道路・橋・ダム・トンネルといった土木構造物も含めた、より広範な構造物を造る産業全体を指します。
一方で建築業界は、建設業界という大きな枠組みの中に含まれる、主に住宅や施設などの「建築物」の設計や工事に特化した分野です。
この記事では、主に建物づくりに関わる「建築業界」に焦点を当てて解説を進めていきます。建築業界の仕事に興味がある方は、この違いを覚えておきましょう。
③建築の仕事の進め方
建築の仕事は以下の流れで進行します。
- ヒアリング
- 設計
- 工事
- 検査
- 引き渡し
施主(発注者)からのヒアリングでは、目的・規模・デザイン・予算などを具体的に把握します。次の設計では設計図を作成しますが、その中心となるのが建築士です。
設計図が完成したら、施工業者を選定し、工事が開始され、工事期間中は、設計通りに安全に工事が進んでいるかを管理する「工事監理」や、現場の職人たちをまとめ、品質や工程、安全を管理する「施工管理」が実施されます。
建物が完成すると、施主や関係者による検査が行われ、問題がなければ引き渡しという流れです。建物引き渡し後も改修や補修などで長期的にかかわることも、建築業界の仕事の特徴ですよ。
建築業界の主な業種6つ

建築業界と一口に言っても、様々な役割を担う業種が存在します。主な業種は以下の6つです。
それぞれの特徴や仕事内容を理解して、自分がどの分野に興味があるのかを考える参考にしてください。
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①ゼネコン
ゼネコンとは「ゼネラルコントラクター」の略で、総合建設業者を指します。建築工事や土木工事を一式で発注者から直接請け負い、プロジェクト全体の企画・設計・施工・研究開発までを総合的に手がける企業です。
マンションや商業施設などの大規模な工事や、空港・ダム・トンネルといった社会インフラの建築プロジェクトを主導します。工事の規模が大きく、関わる人の数も多いため、全体の管理能力が求められるのが特徴です。
ゼネコンは、自社で全ての工事を行うわけではありません。専門的な工事は、サブコンや専門工事業者に発注し、それらを統括しながらプロジェクトを進めていきます。
建築業界を代表する存在であり、地図に残るような大きな仕事に携われるチャンスが多いのが魅力の1つといえるでしょう。
②サブコン
サブコンとは「サブコントラクター」の略で、ゼネコンなどの元請け企業から、建築物における特定の専門工事を請け負う会社を指します。建設プロジェクトにおける専門分野のスペシャリスト集団といえるでしょう。
ゼネコンが建物全体の骨組みや内外装の大枠を管理するのに対し、サブコンは建物の機能性や快適性を高めるための重要な部分を担当します。具体的には以下の分野がありますよ。
- 電気設備工事
- 空調・衛生設備工事
- 消防設備工事
- 昇降機設備工事
- 内装工事
- 塗装工事
- 防水工事
建物が完成した際には目に見えにくい部分の工事も多いですが、人々の安全で快適な暮らしを支えるためには欠かせない存在です。
ゼネコンと協力しながら、それぞれの専門技術を駆使して建築物の一部を創り上げていく、縁の下の力持ち的な役割を担っています。
③ハウスメーカー
ハウスメーカーは、主に個人向けの戸建て住宅の設計・施工・販売を全国規模で展開している企業を指します。ブランド力があり、テレビCMなどで名前を聞く機会も多いでしょう。
各社が独自の工法やデザイン、商品を持ち、規格化された住宅を提供しているのが特徴です。モデルハウスや住宅展示場を持ち、顧客への提案・契約・設計・施工管理・アフターサービスまでを一気通貫で提供します。
ハウスメーカーの仕事は、営業・設計・施工管理・インテリアコーディネーター・商品開発など多岐にわたります。
安定した経営基盤のもとで多くの住宅建設に携わりたい、また、住宅という身近なものづくりを通じて人々の暮らしに貢献したいと考える人におすすめの業種です。
④設計事務所
設計事務所は、建築物の設計や工事監理を専門に行う事務所です。建物のデザイン・機能性・安全性などを考慮し、施主の要望を形にするための設計図を作成します。
設計事務所には、個人経営の小規模なアトリエ系事務所から、大規模な組織設計事務所まで様々な形態がありますよ。
アトリエ系事務所は、建築家の個性を活かした独創的なデザインが得意です。組織設計事務所は、官公庁の施設や大規模な民間プロジェクトなど、幅広い用途や規模の建築物を手がけます。
主な仕事は、施主との打ち合わせ・現地調査・設計・工事監理です。デザイン力はもちろん、建築基準法などの関連法規や構造、設備に関する知識などが求められます。
自らのアイデアやデザインで建築物を創造したい、ものづくりの上流工程に深く関わりたいという人にとって、非常にやりがいのある業種といえるでしょう。
⑤デベロッパー
デベロッパーは、都市開発や不動産開発を主体的に手がける企業です。
土地の取得から建物の企画立案、設計事務所やゼネコンへの発注、完成した建物の販売や賃貸、さらには運営管理まで、プロジェクト全体を管理します。
扱う対象は、オフィスビル・商業施設・マンション・リゾート施設・街全体の再開発など、非常に大規模なものが多いのが特徴です。そのため、事業の企画力や資金調達力など、幅広い能力が求められますよ。
デベロッパー自身が設計や施工を直接行うことは少なく、プロジェクトの主導者として、建築家や建設会社と協力しながら事業を進めます。
街づくりというスケールの大きな仕事に携わり、社会に大きな影響を与えたいという考えを持つ人にとっておすすめの選択肢です。
⑥工務店
工務店は、地域に密着した形で戸建て住宅や小規模なアパート、店舗などの建築工事を請け負う会社です。特定のエリアで長年事業を続けている場合が多く、その地域の気候風土や顧客のニーズを熟知しています。
ハウスメーカーのような規格化された商品ではなく、顧客の要望に合わせて一から設計する自由度の高い家づくりが特徴です。設計から施工、メンテナンスまで全て担当するため、顧客との距離が近いのも魅力の1つですよ。
大手ハウスメーカーほどの広告宣伝は行わないものの、口コミや紹介で信頼を得て、地域での実績を積み重ねています。木造建築を得意とし、伝統的な工法や自然素材を活かした家づくりを行う工務店も少なくありません。
地域社会に貢献したい、お客様一人ひとりとじっくり向き合った家づくりをしたいという人に向いている業種です。
建築業界の主な職種5つ

建築業界は業種だけでなく、様々な専門知識やスキルを持つ人々の協力によって成り立っています。建設業界で活躍する代表的な職種は以下の5つです。
それぞれの仕事内容や特徴を理解し、自分の興味や適性がどの職にあるか考えてみましょう。
①設計
設計の仕事は、クライアントの要望や建物の用途、予算など、様々な条件を考慮しながら建築物のプランを図面として表現することです。
主な業務には、建物のコンセプトを固める「企画設計」、大まかなプランやデザインを決定する「基本設計」、工事に必要な詳細な図面を作成する「実施設計」などがありますよ。
CADソフトを駆使して図面を作成するほか、クライアントや施工業者との打ち合わせ、行政への申請手続きなども行います。
デザインセンスや建築基準法などの専門知識、クライアントとのコミュニケーション能力が欠かせません。
建築士の資格が求められる場合が多く、経験を積むことでより大規模で複雑なプロジェクトに挑戦することも可能です。
②施工管理
施工管理は、建築工事の現場において、工事が計画通り進むように全体を管理する仕事です。
「四大管理」と呼ばれる品質管理・原価管理・工程管理・安全管理を徹底し、建物を期日までに予算内で完成させることを目指します。
現場では、多くの職人や専門業者と連携を取りながら、作業の指示や調整を行います。施工図作成、工事の進捗状況とスケジュールの管理、環境整備も重要な業務ですよ。
コミュニケーション能力・リーダーシップ・問題解決能力・責任感が求められる仕事です。予期せぬトラブルが発生することもありますが、多くの人々と協力して巨大な構造物を完成させる達成感は格別でしょう。
建築施工管理技士の資格を取得するとより大きな現場を任されるなど、仕事の幅が広がります。
③研究開発
建築業界における研究開発は、安全で快適かつ環境に優しい建築物を実現するための新しい技術や工法、材料などを研究する仕事です。
耐震技術の向上・省エネルギー化・建設現場の生産性向上など、そのテーマは多岐にわたりますよ。
例えば、地震に強い新しい構造システムの研究、CO2排出量を抑える建材の開発などです。実験やシミュレーションを繰り返し、データを分析しながら、実用化に向けた研究を進めていきます。
大学や研究機関と連携したり、社内に専門の研究所を設置したりして取り組む企業がほとんどです。建築学、材料工学、環境工学など様々な分野の専門知識が求められ、論理的思考力や根気強さが必要とされます。
最新技術に触れながら、未来の建築業界を支える技術を生み出す可能性を秘めた、夢のある仕事といえるでしょう。
④営業
建築業界の営業は、個人や法人、官公庁などに対して、建築プロジェクトの受注を目指して活動する仕事です。
単に商品を売るのではなく、顧客のニーズを的確に把握し、最適な建築プランや技術を提案する能力が求められます。
主な業務としては、新規顧客の開拓・既存顧客との関係構築・プロジェクトに関する情報収集・提案書の作成・見積もりの提示・契約交渉などがありますよ。
住宅メーカーであれば個人顧客への戸建て住宅の提案、ゼネコンであれば大規模プロジェクトの入札参加などが代表的です。
建築に関する知識はもちろん、コミュニケーション能力・交渉力・プレゼンテーション能力・情報収集能力が重要ですよ。顧客との信頼関係を築き、大きな契約をまとめた時の達成感は大きなやりがいとなるでしょう。
⑤積算
積算は、建築プロジェクトにかかる全ての費用を、設計図書や仕様書に基づいて正確に算出する専門的な仕事です。
建物を構成する材料の数量や単価、工事に必要な職人の手間賃、仮設費用、諸経費などを1つ1つ拾い出し、工事全体のコストを見積もります。
正確な積算は、企業の利益確保や適正な価格での工事受注に欠かせません。設計変更があった場合には、その都度、迅速かつ正確に再積算を行う必要も出てきます。
図面を読み解く能力、建築材料や工法に関する幅広い知識、そして細部にわたる緻密な計算能力が必要です。
地道な作業が多いですが、建築プロジェクトの経済的な側面を支える専門職として、なくてはならない存在と言えるでしょう。
建築業界の市場規模と就職者数の推移|なぜ建築業界は人手不足なのか

建築業界の現状を理解するためには、市場の大きさとそこで働く人々の動向、そして業界が抱える人手不足の問題について知ることが欠かせません。
ここでは、データに基づきながら、建築業界の市場規模の動きと人手不足の背景にある原因を解説していきます。
①建築業界の市場規模の動向
建築業界の市場規模は、国内の経済状況や公共投資、民間設備投資の動向に大きく影響を受けます。
建設投資額はバブル経済期にピークに達した後、長らく減少傾向にありました。その後、東日本大震災からの復興需要や、東京オリンピック・パラリンピック関連の建設投資などにより、近年は回復傾向を見せています。
今後は、以下の内容が市場を支えると考えられます。
- 老朽化したインフラの維持更新
- 防災・減災対策のための国土強靭化計画
- 都市部の再開発プロジェクト
- 環境配慮型建築への移行
一方で、資材価格の高騰や人手不足によるコスト増、新設住宅着工戸数の減少といった懸念材料の存在も把握しておきましょう。
②データから見る建築業界の人手不足の原因
建築業界は、長年にわたり深刻な人手不足に悩まされており、その背景には、複数の要因が複雑に絡み合っている状況があります。
まず挙げられるのが、就業者の高齢化と若年入職者の減少です。国土交通省の「建設業の働き方改革の推進」によると、建設業就業者数は1997年は約685万人だったのに対し、2022年には約479万人と減少傾向です。
特に深刻なのは年齢構成で、55歳以上の就業者が全体の約36%を占める一方、29歳以下の若年層は約12%に留まっています。このままでは、ベテラン技能者の大量退職により、技術の承継が困難になる恐れがあるのです。
若年層が建築業界を敬遠する理由としては、3K(きつい・危険・汚い)のイメージや、労働条件の厳しさ、賃金水準への不満などが挙げられます。
これらのイメージを払拭することが、人手不足解消の大きな課題となっていますよ。
建築業界が抱える4つの課題

社会の基盤を支える重要な役割を担う建築業界ですが、以下の4つの課題に直面しています。
これらの課題を理解することは、業界の将来を考える上で避けては通れません。建築業界を目指すなら、課題についても考えておきましょう。
①2024年問題
2024年4月1日から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、業界全体が従来の働き方を見直す必要に迫られました。
人手不足が解消されないまま労働時間が短縮されることによる工期の遅延や、人件費の増加といった問題を引き起こすと懸念されたのが、「2024年問題」です。
これまで建築業界は、工期遵守のプレッシャーや人手不足から長時間労働が常態化しやすい傾向がありました。この規制は、労働者の健康確保やワークライフバランスの改善に繋がります。
企業は、DXの推進、適正な工期設定、多能工の育成、週休2日制の導入など、働き方改革への対応を迫られています。この問題を乗り越えることは、建築業界が発展するための重要な転換点となるでしょう。
②建設資材の価格高騰とその影響
近年、世界的な原材料価格の上昇や円安などの影響を受け、主要な建設資材の価格が高騰しています。これは「ウッドショック」や「アイアンショック」とも呼ばれ、建築業界に与える影響は少なくありません。
資材価格の高騰は建築コストの増大に直結するため、建設会社の利益率の圧迫に繋がり、経営を不安定にさせる要因となります。また、施主側から見ても、建築費用の増加は大きな負担となります。
この問題に対応するため、企業はコスト削減の努力や代替材料の検討、発注者との価格交渉などを行っていますが、根本的な解決は難しい状況です。
資材価格の動向は、今後の建築プロジェクトの採算性や市場全体の動向に大きく関わってくるため、引き続き注視が必要です。
③建築業界の「闇」といわれる労働環境の実態と改善点
建築業界は、「きつい」「危険」「汚い」の3Kに加え、「給料が安い」「休暇が少ない」「帰れない」という新3Kのイメージが根強く残っています。
これらの厳しい労働環境が、若年層の入職を妨げ、人手不足を深刻化させる要因の1つです。
しかし、働き方改革やICT技術の導入による生産性向上・給与体系の見直し・社会保険加入の徹底・現場の安全衛生管理の強化など、「闇」の部分を改善しようという業界の動きも活発化しています。
「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の導入により、技能者の資格や就業履歴が登録され、能力が適正に評価される仕組みも整備されつつあります。
④建設業界は暇という噂と働き方の実情
「建設業界は暇になる時期がある」という噂を耳にすることがあるかもしれません。これは、公共事業の予算執行サイクルや、季節的な要因によって、仕事量に波が生じることがあるためです。
しかし、業界全体として慢性的に「暇」という状況では決してありません。むしろ、人手不足や2024年問題への対応、老朽化インフラの維持更新、災害復旧など、建設需要は依然として高い水準にあります。
働き方については、長時間労働や休日出勤が当たり前という風潮から、週休2日制の導入や有給休暇取得の推進など、改善に向けた動きが進んでいます。ただし、企業や職種によって働き方にはまだ差があるのが現状です。
建築業界の将来性と今後の動向

多くの課題を抱える建築業界ですが、その将来性は決して暗いものではありません。社会の変化に対応して新たな技術を取り入れることで、持続可能で魅力ある産業へと進化していく可能性を秘めています。
建築業界の将来性を理解して、今後の動向をしっかり追えるようにしておきましょう。
①DX化の推進
建築業界では、DX化の推進が急速に進んでいます。これは、AI・IoT・BIM/CIM・ドローン・ロボットといったデジタル技術を活用し、業務の進め方や生産性を改善しようとする動きです。
例えばBIM/CIMを導入することで、設計・施工・維持管理に至るまでの情報を3Dモデルで一元的に管理し、関係者間の情報共有を円滑化、手戻りの削減が可能ですよ。
ドローン測量は大幅な時間短縮とコスト削減を、建設ロボットは危険な作業の自動化を実現する可能性があります。
こうしたDX化は、建築業界が抱える多くの課題を解決する鍵となり、デジタル技術を使いこなせる人材の育成と、業界全体での導入促進が今後の成長を左右するでしょう。
②環境配慮型建築の需要拡大
地球温暖化対策や持続可能な社会の実現に向けた意識の高まりから、環境に配慮した建築物の需要が世界的に拡大傾向です。
建築業界においても、省エネルギー性能の高い建材や設備の採用、再生可能エネルギーの活用、CO2排出量の削減などが重要なテーマとなっていますよ。
具体的には、ZEBやZEHといった、年間の一次エネルギー消費量が実質ゼロ以下となる建築物の普及が進んでいます。また、木材の活用による炭素固定や、建物の長寿命化なども注目されるようになりました。
環境性能の高い建築物は、光熱費の削減や企業価値の向上といったメリットがあり、今後ますます市場での競争力を持つようになります。環境に関する知識や技術を持つ人材の重要性も高まっていくでしょう。
③ストック活用市場の成長
新築住宅の着工戸数が減少傾向にある一方で、既存の建物を有効活用する「ストック活用市場」が成長しています。
これは、リフォームやリノベーションによって既存建物の価値を高め、長く使い続けていこうという考え方です。
少子高齢化や空き家の増加といった社会問題を背景に、国も既存住宅流通やリフォーム市場の活性化を後押ししています。
耐震改修や省エネ改修、バリアフリー化などのリフォームの需要は今後も高まるでしょう。また、古民家再生やコンバージョンといった、新たな価値を創造するリノベーションも注目されています。
ストック活用は新築に比べて環境負荷が少なく、地域の景観や文化を維持することにも繋がり、既存建物の診断技術や多様なニーズに応える提案力、そして高い施工品質が求められる分野です。
④防災・減災対策と国土強靭化への貢献
日本は自然災害が多い国であり、防災・減災対策は常に重要な課題です。建築業界は、建物の耐震化や免震・制震構造の導入、洪水対策としての高床化や防水壁の設置など、安全な社会基盤づくりに大きく貢献しています。
政府が進める「国土強靭化計画」においても、建築業界の役割は小さくありません。公共施設の耐震化、避難施設の整備、老朽化したインフラの補修・補強など、災害に強い国づくりに向けた動きが活発です。
近年では、災害発生時の事業継続計画の観点から、企業の防災対策への意識も高まっています。建築業界には、最新の防災技術やノウハウを駆使して、より安全で強靭な社会の実現に貢献することが期待されます。
建築業界で働く4つの魅力

建築業界には課題も多く、厳しい側面も少なくありませんが、大きな魅力とやりがいがある業界です。
建築業界の負の側面だけでなく、魅力も理解したうえで、今後進むべきかどうかを検討しましょう。
①ものづくりの達成感と地図に残る仕事
建築の仕事の最大の魅力の1つは、何もないところから形あるものを創り上げていく「ものづくり」の達成感です。図面上の線が立体的な構造物へと姿を変えていく過程は、何物にも代えがたい喜びを与えてくれます。
そして、完成した建物は時に何十年、百年以上もその場所に存在し続け、多くの人々に利用されます。自分の仕事が「地図に残る」というスケールの大きさは、建築業界ならではの醍醐味と言えるでしょう。
自分が携わった建物の前を通りかかったり、多くの人がそこで活動する姿を見るたびに、誇りと喜びを感じられます。
苦労が多ければ多いほど完成時の感動は大きく、その経験が次の仕事へのモチベーションへと繋がっていきます。
②専門性とスキルアップの実感
建築業界の仕事は、設計・施工管理・積算・研究開発など、多岐にわたる専門分野で構成されています。それぞれの分野で深い知識や高度な技術が求められ、日々の業務を通じて専門性を高めていくことができます。
資格取得の支援制度が充実している企業も多く、建築士や施工管理技士といった国家資格を取得することで、より責任のある仕事を任されたり、自身の市場価値を高めたりすることが可能です。
新しい工法や技術が次々と生まれる業界なので、常に学び続ける姿勢が大切ですが、それがスキルアップを実感できる機会にもなります。
経験を積むほどに対応できる業務の幅が広がり、難しい課題を乗り越える力が身についていくのを実感できるのは、大きな魅力です。
③日常の風景の見方が変わる面白さ
建築業界で働くようになると、それまで何気なく見ていた街の風景や建物の見方が大きく変わります。
建物のデザイン、構造、素材、施工方法など、専門的な視点から物事を観察するようになり、日常の中に新たな発見や面白さを見出すことができるでしょう。
例えば、旅行先で訪れた歴史的建造物の精巧な造りに感動したり、斬新なデザインの商業施設を見て設計者の意図を想像したりと、知的好奇心が刺激される場面が増えます。
仕事で得た知識や経験が、プライベートでの物の見方や楽しみ方を豊かにしてくれるのは、建築業界ならではの面白さの1つです。
④社会貢献と人々の生活を支えるやりがい
建築物は、人々の生活や経済活動、文化を支える基盤そのものです。建築業界の仕事は、こうした社会に欠かせない空間を作り提供することを通じて、人々の生活を直接的に支えています。
災害が発生した際には、被災地の復旧・復興に尽力し、安全・安心な暮らしを取り戻す手助けをします。また、環境に配慮した建物を造ることは、地球全体の未来に貢献することにも繋がります。
自分たちの仕事が誰かの役に立ち、社会全体の発展に貢献しているという実感は、大きなやりがいです。人々の笑顔や感謝の言葉に触れる機会も多く、社会の一員としての責任感と誇りを持って仕事に取り組めるでしょう。
建築業界の年収ランキング

建築業界への就職を考える上で、企業の規模や待遇は気になるポイントの1つです。ここでは以下の2つのランキングを紹介します。
建築業界を目指す際に参考にしてください。ただし、これらはあくまで目安であり、個人の能力や経験、勤務する地域によって変動するので注意してください。
①大手企業5社の平均年収ランキング
建築業界の中でも、特に規模の大きなプロジェクトを数多く手がける企業をスーパーゼネコンと呼びます。
代表的な大手企業5社の平均年収ランキングは以下の通りです。
順位 | 企業名 | 平均年収 |
1位 | 鹿島建設株式会社 | 約1,177万円 |
2位 | 株式会社大林組 | 約1,066万円 |
3位 | 株式会社竹中工務店 | 約1,032万円 |
4位 | 大成建設株式会社 | 約1,024万円 |
5位 | 清水建設株式会社 | 約982万円 |
これらの企業は、国内外で大規模なプロジェクトを手がけており、高い技術力と豊富な実績を持っており、年収が高いのは、それだけ専門性や責任の大きな仕事が求められるという理由があります。
②職種別平均年収ランキング
建築業界には様々な職種があり、専門性や経験、需要によって平均年収も異なります。
厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」で、建築業界に関係する資格で検索したデータを参考にした職種別の平均年収ランキングは以下の通りです。
順位 | 職種 | 平均年収 |
1位 | 建築設計技術者 建築施工管理技術者 | 632.8万円 |
2位 | 土木設計技術者 | 603.9万円 |
3位 | インテリアデザイナー | 509.3万円 |
4位 | 測量士 | 489.1万円 |
5位 | 建設機械オペレーター | 474.7万円 |
6位 | 大工 | 457.1万円 |
7位 | 左官 | 452.6万円 |
8位 | CADオペレーター | 452万円 |
9位 | 建築板金 | 428.4万円 |
この他にも、複数の資格取得や経験年数、役職、勤務先の企業規模などによっても年収は変わります。
さらに、ここでは紹介しきれていない職業もあります。自分が目指している職業の詳細については、改めて調べてみましょう。
建築業界で求められる5つのスキル

建築業界で活躍するためには、専門的な知識や技術以外にも様々なスキルが求められます。特に求められるスキルは以下の5つです。
多くの人と関わり、複雑なプロジェクトを推進していく上で、これらの能力は欠かせません。まずは紹介する5つのスキルを伸ばすことを意識してみましょう。
「自分の強みが分からない…本当にこの強みで良いのだろうか…」と、自分らしい強みが見つからず不安な方もいますよね。
そんな方はまず、就活マガジンが用意している強み診断をまずは受けてみましょう!3分であなたらしい強みが見つかり、就活にもっと自信を持って臨めるようになりますよ。
①コミュニケーション能力
建築プロジェクトは、施主・設計者・施工管理者・専門工事業者・職人など、非常に多くの関係者が協力して進めます。
それぞれの立場や意見を理解し、円滑に情報伝達を行って共通の目標に向かってチームをまとめるためには、高いコミュニケーション能力が欠かせません。
これには、相手に分かりやすく説明する力、相手の意図を正確に聞き取る力、そして時には異なる意見を調整し、合意形成を図る交渉力も含まれます。
現場での指示や打ち合わせ、顧客への提案など、あらゆる場面でこの能力が試されるでしょう。良好な人間関係を築き信頼を得ることが、プロジェクトを成功に導くための重要な要素ですよ。
日頃から相手の立場に立って物事を考え、積極的な対話を心がけることが大切です。
②問題解決能力
建築プロジェクトは、計画通りに進むことばかりではありません。予期せぬ天候の変化・資材の納入遅れ・設計変更・現場でのトラブルなど、様々な問題が発生する可能性があります。
これらの問題に直面した際に、冷静に状況を分析して原因を特定し、最適な解決策を迅速に見つけ出す能力が求められます。
過去の事例や専門知識をもとに、多角的な視点から解決策を検討し、関係者と協力して実行に移す力が必要です。時には、限られた時間やリソースの中で最善の判断を下さなければならない場面もあります。
困難な状況でも諦めずに、粘り強く課題に取り組む姿勢が重要となるでしょう。日々の業務の中で小さな問題解決を積み重ねていくことが、この能力を養うことに繋がります。
③マネジメント能力
特に施工管理やプロジェクトマネージャーといった立場では、プロジェクト全体を俯瞰し、計画通りに目標を達成するためのマネジメント能力が極めて重要です。
これには、品質・コスト・工程・安全などの要素を総合的に管理する力が含まれます。
多くの人を動かし、チームのモチベーションを高め、それぞれの能力を最大限に引き出すリーダーシップもマネジメント能力の重要な一部です。
状況の変化に柔軟に対応し、リスクを予測して事前に対策を講じる先見性も求められますよ。
④探求心と学習意欲
建築技術や工法、関連法規は常に進化し、変化しています。新しい建材や省エネ技術、DXツールなどが次々と登場するため、常に新しい知識や情報を吸収しようとする探求心と学習意欲が必要です。
現状に満足せず、より良いものを目指して自ら学び続ける姿勢が、自身の専門性を高め、キャリアアップに繋がります。資格取得のための勉強や業界の最新動向の把握、他分野の知識を学ぶことも有効です。
建築という分野は奥が深く、学ぶべきことは尽きません。その探求の過程を楽しめる人にとって、建築業界はおすすめの選択肢の1つです。
⑤安全管理意識
建築現場は、高所作業や重機の使用など、多くの危険が伴う場所です。そのため、作業員一人ひとりの安全はもちろん、現場全体の安全を確保するための高い安全管理意識が何よりも重要視されます。
「安全第一」の考え方を徹底し、危険予知活動や保護具の正しい着用、作業手順の遵守などを習慣化することが求められますよ。
小さな油断や見落としが大きな事故に繋がる可能性があることを常に認識し、細心の注意を払って業務に取り組む意識が必要です。
特に施工管理者は、現場の安全環境を整備し、作業員への安全指導を行う責任があります。人命に関わる重要な意識であり、建築業界で働く全ての人に共通して求められる基本的なスキルです。
建築業界への就職で知っておきたい4つの要点

建築業界への就職を目指すにあたって、以下の4つのポイントを押さえておきましょう。
これらを理解し、しっかりと対策を行うことで、よりスムーズに就職活動を進められます。
①建築業界の志望動機の書き方
建築業界の採用担当者に響く志望動機を作成するには、以下の点を意識しましょう。
- なぜ建築業界なのか
- なぜその企業なのか
- 入社後に何をしたいのか
単に「ものづくりが好き」というだけでなく、具体的なエピソードや経験を交えながら、あなたの熱意と建築への思いを伝えることが大切です。
自己分析と企業研究を徹底的に行い、自分の言葉で語ることが重要です。建築業界で働きたいという強い意志と、その企業で活躍したいという熱意が伝わるような、独自性のある志望動機を目指しましょう。
②情報収集の方法
建築業界は専門性が高く、常に新しい技術や情報が更新される分野です。業界の動向や企業の取り組みを深く理解するためには、積極的な情報収集が欠かせません。
業界専門誌や建設関連のニュースサイト、国土交通省などの官公庁が発表する統計データや白書は、信頼性の高い情報源です。
また、建築関連の書籍やセミナーに参加することも、知識を深め、業界の雰囲気を知る上で有効ですよ。
企業のウェブサイトでは、事業内容だけでなく、企業理念・社風・社員インタビューなどが掲載されていることが多いので、隅々までチェックしましょう。
OB・OG訪問が可能であれば、積極的に活用しましょう。実際に働いている人の生の声を聞くことは、企業理解を深める絶好の機会となりますよ。
③自己分析の進め方
建築業界でどのような仕事がしたいのか、そして自分にはどのような適性があるのかを明確にするために、自己分析は非常に重要です。過去の経験を振り返り、自分の長所や短所、価値観などを客観的に把握しましょう。
学生時代の研究テーマやアルバイト経験、サークル活動など、何かに真剣に取り組んだ経験の中でどのような役割を果たし、何を学んでどのような成果を上げたのかを具体的に書き出してみます。
その中で、建築業界で求められるコミュニケーション能力、問題解決能力、探求心などに繋がる要素を見つけ出しましょう。
「なぜ建築なのか」「建築を通して何を成し遂げたいのか」という問いを自分自身に投げかけ、深く掘り下げていくことで、志望動機や自己PRの核となる部分が見えてきます。
④企業研究のコツ
建築業界には、ゼネコン・ハウスメーカー・設計事務所・デベロッパーなど、様々な業種の企業が存在します。自分に合った企業を見極めるためには、幅広い視野で企業研究を行うことが大切です。
以下の点は企業を比較する上で重要なポイントです。
- 企業の規模
- 業績
- 得意とする分野
- 手がけたプロジェクト
- 経営理念やビジョン
- 社風
- 教育研修制度
- 福利厚生
- 社員の働きがい
企業のウェブサイトや会社説明会だけでなく、社員の口コミサイトや業界の評判なども参考に情報を集めましょう。
特に、インターンシップに参加できる機会があれば積極的に活用し、実際に企業の雰囲気や仕事内容を体験してみることをおすすめします。
建築業界の全体像をつかんで未来への選択肢を広げよう

建築業界は、私たちの社会基盤を支え、人々の生活を豊かにする上で欠かせない産業です。
少子高齢化による人手不足、2024年問題といった課題に直面している一方で、DX化の推進、環境配慮型建築の需要拡大、ストック活用市場の成長など、新たな発展の可能性も秘めています。
また、建築業界は地図に残る仕事であり、直接的に人々の生活を支え、社会貢献ができる魅力も兼ね備えていますよ。
建築業界は、変化の時代の中でより魅力的で持続可能な産業へと進化する途中段階です。本記事の内容を読み込んで、建築業界への理解をより一層深めていきましょう。
まずは志望動機を作ってみる
この記事を書いた人
編集部
「就活に苦しむ学生を減らしたい」をモットーに、志望動機やES、面接対策など、多種多様な就活の困りごとを解決するための記事を日々発信。700以上の記事で就活生の悩みに対処しつつ、就活の専門家であるキャリアアドバイザーの監修により、最後まで内定を狙える就活の方法を伝授し続けています。