HOME > 就活マガジン記事 > 企業が採用で行う身辺調査の実態|背景や目的、調査内容を詳しく解説

企業が採用で行う身辺調査の実態|背景や目的、調査内容を詳しく解説

就職の選考で、「身辺調査があるって本当?」「SNSまで見られるの?」と不安に感じたことはありませんか。

実際、採用の最終段階で応募者の信頼性を確認する目的で、身辺調査を実施する企業も増えています。

この記事では、企業がどんな目的で何を調べるのか、また調査で注意すべきポイントをわかりやすく解説します。

ぜひこの記事を参考に、身辺調査の実態を正しく理解し、不安を解消していきましょう。

エントリーシートのお助けアイテム

目次

身辺調査とは?採用時に行われる背景と目的

採用活動における「身辺調査」とは、候補者の人物像や過去の行動を確認し、採用後のトラブルを防ぐために行う調査のことです。

近年では、SNSや前職での評判を含めた「信頼性の確認」が重視され、コンプライアンス意識の高まりとともに注目されています。

ここでは、定義・背景・目的・他のチェック手法との違いなどを整理します。

  1. 身辺調査の定義
  2. 採用時に行われる背景
  3. 企業が重視する目的
  4. リファレンスチェックやバックグラウンドチェックとの違い
  5. 身辺調査が注目される社会的背景

①身辺調査の定義

身辺調査とは、採用予定者の信用性や信頼性を確認するために行う調査のことです。

具体的には、犯罪歴、借金、勤務態度、人間関係など、企業活動に悪影響を及ぼすおそれのある情報を把握することを目的としています。

ただし、現代の採用では「違法な差別につながる調査(出身地・思想・宗教など)」は厳しく制限されており、個人情報保護法に基づいた適切な運用が求められます。

企業が行うべきは、応募者の人格を否定することではなく、業務上のリスクを事前に把握することです。身辺調査は信頼関係を築くための安全確認であり、慎重で透明性のある手続きが必要でしょう。

②採用時に行われる背景

企業が採用時に身辺調査を行う背景には、「雇用後のトラブル防止」と「企業ブランドの保護」という2つの目的があります。

過去の不正行為や反社会的勢力との関係が明らかになれば、企業の信用に大きな損害を与える可能性があるためです。

また、SNSや口コミサイトの普及により、社員1人の発言が会社全体の評判を左右する時代になりました。

こうした状況の中で、企業は採用段階から候補者の信頼性を確認し、リスクを最小限に抑える必要があります。

身辺調査は「安心して任せられる人材」を見極めるためのリスクマネジメント手段といえるでしょう。

③企業が重視する目的

身辺調査の主な目的は、①業務上の不正リスクを避けること、②職場の安全性を確保すること、③社内文化との適合性を確認することの3点です。

特に金融・教育・医療など、社会的責任が重い業界では、信用失墜が事業の継続に直結するため、慎重な確認が行われます。採用担当者が意識すべきは「排除」ではなく「適材適所」を目指すことです。

過去の経歴よりも、現在の姿勢や改善意欲に注目することで、公平な採用につながります。

身辺調査は応募者の人格を否定する手段ではなく、企業と個人が信頼し合うための安全確認プロセスとして運用されるべきでしょう。

④リファレンスチェックやバックグラウンドチェックとの違い

身辺調査と混同されやすい手法に、リファレンスチェックやバックグラウンドチェックがあります。

リファレンスチェックは、前職の上司や同僚に候補者の働きぶりを確認する方法で、主観的な評価を重視します。

一方、バックグラウンドチェックは、経歴・資格・犯罪歴などの客観的データを第三者機関が検証する方法です。

これに対して身辺調査は、より広範囲の情報を対象とし、社会的信用度を総合的に判断する点が特徴です。ただし、法律やプライバシーの観点から、調査範囲には明確な線引きが必要です。

各手法の違いを理解し、適切に使い分けることで、信頼される採用活動を実現できます。

⑤身辺調査が注目される社会的背景

SNSの炎上や不正会計など、企業の信頼を揺るがす事件が増えたことで、身辺調査は再び注目を集めています。

特に情報漏えいや内部不正、ハラスメントなどのリスクが高まる現代では、採用段階での信用確認が重要視されているのです。一方で、過剰な調査は個人の権利を侵害するおそれがあります。

企業に求められるのは「疑う採用」ではなく「信頼を前提とした確認」です。

社会が透明性を重視する今、倫理と法令遵守を両立させた調査体制を整えることが、企業のブランド価値を守るうえで欠かせません。

企業が採用時に身辺調査を行う理由

企業が採用時に身辺調査を行うのは、採用後に発生するトラブルや信用リスクを未然に防ぐためです。ここでは、企業が身辺調査を実施する主な6つの理由を紹介します。

  1. 採用後のトラブル防止
  2. 経歴詐称・虚偽申告のリスク回避
  3. 社内コンプライアンスの強化
  4. 取引先・顧客との信頼関係維持
  5. 反社会的勢力の排除
  6. 企業ブランドの保全

①採用後のトラブル防止

身辺調査を行う最大の目的は、採用後に起こるトラブルを防ぐことです。過去に問題行動や不正行為があった場合、同じようなリスクが再発するおそれがあります。

事前にこうした情報を把握することで、採用判断の精度を高められるでしょう。また、早期離職や職場でのトラブルを避ける効果も期待できます。

結果として、採用コストの無駄を減らし、安定した組織運営につながります。

②経歴詐称・虚偽申告のリスク回避

応募書類や面接内容が事実と異なるケースは珍しくありません。特に学歴や職歴、資格などを偽る行為は、企業の信頼を損なう重大な問題です。

身辺調査を実施すれば、これらの情報を客観的に確認でき、誤った採用判断を防げます。

信頼性の高い人材を確保するうえで、調査は有効な手段といえるでしょう。特に重要ポジションの採用では、その意義がより大きくなります。

③社内コンプライアンスの強化

企業の不祥事の多くは、個人の倫理意識の欠如から生じます。身辺調査を通じて候補者の過去の行動や社会的信用を確認することで、内部統制を強化できます。

特に金融や情報関連など、秘密保持や法令遵守が求められる業種では不可欠です。採用段階からコンプライアンス意識を重視する姿勢を示すことで、組織全体の規範意識を高められるでしょう。

④取引先・顧客との信頼関係維持

採用する人材の言動や信用は、企業の評価にも直結します。取引先や顧客は、担当者を通じて会社の姿勢を見ています。不適切な言動や過去の問題行動が判明すれば、関係が悪化する可能性もあります。

事前にリスクを把握しておくことで、企業としての信用を守ることが可能です。その結果、取引の継続や顧客満足度の維持にもつながるでしょう。

⑤反社会的勢力の排除

企業が反社会的勢力と関係を持つことは、法的にも社会的にも大きな問題です。採用段階で候補者がそうした勢力と関係していないか確認するのは、企業防衛の基本といえます。

特に上場企業や自治体と取引のある企業では、反社会的勢力排除の徹底が求められています。身辺調査によって不適切な関係を早期に発見し、企業の健全性を守ることが大切です。

⑥企業ブランドの保全

採用した社員の行動は、企業のブランドイメージに直結します。SNSでの不適切な発言やトラブルが広まれば、企業の信頼を損なうおそれがあります。

身辺調査で応募者の過去の言動や評価を確認しておくことは、ブランド価値を守るうえで欠かせません。

短期的な採用成果だけでなく、長期的なブランド戦略の一環として捉えることで、企業の社会的信用を高められるでしょう。

身辺調査で確認する具体的な内容

ここでは、企業が採用時に実施する身辺調査で確認される主な項目について解説します。学歴や職歴などの経歴情報に加え、社会的信用や人間関係、さらにはSNS上での発信内容まで多岐にわたります。

いずれも採用リスクを防ぎ、公平な判断を下すために重要な要素です。

  1. 学歴
  2. 職歴
  3. 資格
  4. 過去の勤務態度
  5. 退職理由
  6. 犯罪
  7. 訴訟
  8. 破産履歴
  9. 反社会的勢力との関係
  10. SNS・インターネット上の投稿内容
  11. 金銭トラブル
  12. 信用情報
  13. 人間関係
  14. 評判
  15. 生活実態

①学歴

企業が身辺調査で確認する項目の中でも、学歴は特に重要なポイントです。

企業は卒業証明書や在籍証明書などの公的書類を通じて、最終学歴や在籍期間の真偽を確認します。特に大学名や専攻分野、卒業年度などが一致しているかが重要な確認ポイントです。

もし記載内容に不一致が見つかれば、応募者への信頼が損なわれるだけでなく、企業側にも採用リスクが発生します。

学歴確認は個人情報の取り扱いに関わるため、応募者の同意を得たうえで実施する必要があります。

適切な手続きに基づいて行うことで、法的なトラブルを防ぎつつ、公正な採用活動を維持できるでしょう。

②職歴

職歴の確認は、応募者の実務経験が応募書類どおりであるかを確かめる重要なプロセスです。企業は、前職での在籍期間や業務内容、役職、退職理由などを通じて、仕事への姿勢や安定性を判断します。

確認方法としては、前職の在籍証明書の提出やリファレンスチェックが一般的です。もし職務内容に誇張や虚偽があれば、入社後のミスマッチやトラブルにつながる可能性があります。

ただし、過度な調査は個人情報保護法に抵触するおそれがあるため、応募者の同意のもとで、必要な範囲にとどめることが重要です。

誠実な経歴開示が、双方にとって安心できる採用活動の基盤となります。

③資格

資格の確認は、応募者が業務遂行に必要な知識やスキルを実際に保有しているかを確認するために行われます。特に専門職や技術職では、資格の有無が採用判断に直結することもあります。

企業は、資格証や認定証の提示を求めることで、申告内容の正確性を確認します。国家資格や公的認定資格であれば、発行機関への照会で真偽を確かめることも可能です。

一方、民間資格の場合は、発行元の信頼性や認知度も加味して判断することが求められます。

④過去の勤務態度

過去の勤務態度は、応募者の職業倫理やチームワークの姿勢を判断する手がかりとなります。

勤怠の安定性、上司や同僚との関係性、業務への取り組み姿勢などを確認することで、入社後の適応度を推測できます。

確認手段としては、リファレンスチェックや前職上司への照会が一般的です。ただし、個人情報保護の観点から、応募者の同意を得ることが前提となります。

企業が確認するのは「事実」であり、感情的な評価や主観的な意見に左右されるべきではありません。採用する側も応募者も、透明性を重視する姿勢が大切です。

⑤退職理由

退職理由の確認は、応募者がどのような背景で前職を離れたのかを理解するために行われます。

自発的なキャリアチェンジなのか、体調不良や人間関係などの理由があったのかによって、採用後の定着率や適性を見極められます。

明確な理由があれば、企業側も安心して採用判断を下せるでしょう。確認の際には、履歴書や面接での説明と実際の退職事実が一致しているかが重視されます。

リファレンスチェックや離職票の確認によって、整合性を確かめるケースもあります。特に短期間での転職が多い場合は、職場適応力やコミュニケーション能力への懸念が生じやすいです。

退職理由を偽ることは、入社後の信頼関係を損なう行為にあたります。誠実に伝えることが、長期的なキャリア形成において最も重要です。

⑥犯罪

犯罪歴の有無は、企業にとって極めて慎重に扱うべき情報です。採用後のトラブルや企業イメージへの影響を避けるために、必要に応じて調査が行われる場合があります。

ただし、無制限な調査はプライバシー侵害や差別につながるおそれがあるため、法令に基づいた範囲で実施されることが原則です。

警察への照会などは基本的に認められておらず、企業が確認できる範囲は限られています。過去の裁判記録や報道など、公開情報を参考にすることが一般的です。

特定の職種(金融・教育・警備など)では、倫理性や社会的責任の観点から、より厳格な基準が適用されることもあります。

重要なのは、過去の行為よりも現在の姿勢や改善の意思を正しく評価することです。公平性を保ちながら判断する姿勢が、信頼される採用活動につながります。

⑦訴訟

訴訟の有無を確認する目的は、応募者が過去に重大なトラブルや法的紛争を抱えていないかを把握することにあります。

特に企業や取引先との訴訟歴がある場合、ビジネス上のリスクとして考慮されることもあります。ただし、訴訟があったからといって必ずしも不利益になるとは限りません。

確認できる範囲は、公開されている裁判記録や官報情報などに限られます。個人情報やプライバシーに関わる部分にはアクセスできないため、調査は慎重に行われます。

応募者の人権を侵害するような調査は、企業倫理の観点からも避けるべきでしょう。大切なのは、訴訟の有無よりも「何を学び、どう行動を改めたか」です。

事実の背景を理解したうえで、冷静かつ公正に判断する姿勢が求められます。

⑧破産履歴

破産履歴の確認は、特に金融業界や管理職採用など、金銭管理に関わる職種で重視されます。企業としては、応募者の経済的信用や責任感を測る一要素として位置づけられます。

ただし、破産経験が直ちに不採用理由となるわけではありません。官報などの公的情報を通じて、破産や免責に関する記録を確認することが可能です。

重要なのは、過去の破産ではなく、その後の行動や再建の姿勢です。計画的に再出発を果たしている場合は、むしろ信頼できると評価されるケースもあります。

企業は、経済的背景を評価する際に差別的な判断を避け、応募者の現在の状況や努力を正当に評価する必要があります。透明性と公正さを保つことが重要です。

⑨反社会的勢力との関係

反社会的勢力との関係確認は、企業の社会的信頼を守るうえで欠かせない調査です。

暴力団排除条例やコンプライアンスの観点から、応募者が過去または現在、反社会的勢力と関わりを持っていないかを確認します。

企業は、警察や専門調査機関のデータベースを活用し、反社関係者との接点がないかをチェックします。ただし、調査は法令の範囲内で行う必要があり、過度な詮索はプライバシー侵害にあたります。

確認結果は採用可否の判断に大きく影響するため、慎重な扱いが求められるでしょう。

反社会的勢力との無関係を確認することは、企業の健全性を守るだけでなく、働く社員の安全を確保することにもつながります

⑩SNS・インターネット上の投稿内容

SNSやネット上の投稿は、応募者の価値観や社会的常識を知るための手がかりになります。特に炎上リスクや誹謗中傷など、不適切な投稿が見られる場合、企業の評判にも影響しかねません。

そのため、採用時にSNSの公開範囲や投稿内容を確認するケースが増えています。確認対象は、X(旧Twitter)やInstagram、TikTokなどの主要SNSが中心です。

公的な場に近い発言内容であれば、企業が閲覧することは違法ではありません。ただし、プライベートアカウントを無断で調べる行為は、倫理的に問題があります。

SNSは個人の発信の自由が尊重されるべき領域です。応募者も、公開情報がどのように見られるかを意識し、社会人として適切な情報発信を心がけることが大切です。

⑪金銭トラブル

金銭トラブルの有無は、信頼性や責任感を評価する指標として重視されます。特に経理・営業・管理職など、金銭を扱う業務では慎重な確認が求められるでしょう。

借金や滞納、未払いなどの問題が頻発していれば、職務上のリスクとみなされる可能性があります。調査は、信用情報機関や公的データを通じて行われます。

ただし、本人の同意がないまま調べることは法的に許されていません。企業は必要最小限の範囲にとどめ、個人の尊厳を損なわないよう注意する必要があります。

応募者自身も、金銭管理の透明性や責任感を示すことで信頼を得られます。過去に問題があった場合でも、誠実に対応してきた経緯を説明すれば、プラスに評価されることもあります。

⑫信用情報

信用情報の確認は、主に金融・不動産・保険など、信用取引に関わる職種で行われます。ローンやクレジットカードの返済状況などを通じて、応募者の経済的信頼性を把握する目的があります。

延滞や債務整理の履歴がある場合、業務上のリスクとして判断されることもあるでしょう。確認は、信用情報機関への照会によって行われますが、これも応募者の同意が前提です。

無断での照会は個人情報保護法に違反するため、企業は慎重な手続きが求められます。信用情報は過去の記録であると同時に、現在の生活の安定度を示すデータでもあります。

安定した支払い実績を持つ応募者は、責任感の強い人物として評価されやすいでしょう。

⑬人間関係

人間関係の確認は、職場適応力や協調性を見極めるために行われます。

特にマネジメント職やチームワークが重視される職種では、人との関わり方や周囲とのコミュニケーション能力が採用判断に影響します。

確認方法としては、前職での評価やリファレンスチェックが一般的です。上司や同僚との関係にトラブルがあった場合は、原因や解決への姿勢が重視されます。

ただし、個人的な感情や人間関係の相性を過度に判断材料とするのは避けるべきです。人間関係は一方的に評価できるものではなく、相互作用によって形成されるものです。

過去の経験を通じてどのように改善してきたかを伝えることが、信頼につながるでしょう。

⑭評判

評判の確認は、応募者が業界内外でどのように評価されているかを把握するために行われます。特に対外的な取引や顧客対応を担当する職種では、社会的信用が重要な指標となります。

業界内での信頼度や人望が高ければ、採用後の活躍も期待できるでしょう。企業は、前職関係者や取引先へのヒアリングを通じて評判を確認することがあります。

良い評判は努力と誠実さの積み重ねによって形成されます。応募者自身も、過去の実績や姿勢を正直に伝えることで、信頼を得られるでしょう。

⑮生活実態

生活実態の確認は、応募者が安定した生活基盤を持っているかを判断するために行われます。過度な借金や不安定な住居環境などがある場合、勤務継続への不安要素とみなされることもあります。

特に転勤や長期出張がある職種では、生活基盤の安定が重要です。調査内容には、居住地や生活環境、家族構成などが含まれますが、いずれも応募者の同意が前提です。

私生活への過剰な介入は法的にも倫理的にも問題となるため、企業は必要最小限にとどめる配慮が求められます。安定した生活は、仕事への集中力や継続性を高める土台となります。

応募者自身も、安心して働ける環境を整えておくことが、信頼される社会人への第一歩です。

身辺調査で調べられないこと

採用時に企業が身辺調査を行う場合でも、法律や人権の観点から「調べてはいけない情報」が定められています。

誤って対象外の情報を収集すると、差別的な採用や個人情報保護法違反につながるおそれがあります。ここでは、企業が調べられない具体的な項目を分かりやすく整理します。

  1. 本人の同意を得ていない個人情報
  2. 出身地・宗教・思想など差別につながる情報
  3. 家族構成や婚姻歴などプライバシーに関わる情報
  4. 医療・健康に関する情報
  5. 政治的・宗教的信条
  6. 違法な方法で取得した情報

①本人の同意を得ていない個人情報

採用時の身辺調査では、本人の同意なく個人情報を取得してはいけません。個人情報保護法では、本人の許可なしに情報を収集する行為を原則として禁じています。

たとえば、第三者に無断で学歴や職歴を照会したり、SNSでの発言を監視したりすることは、法的に問題となる可能性があります。

企業が調査を行う際は、その目的と範囲を明確にし、本人に説明した上で同意を得ることが必要です。透明性のあるプロセスを取ることで、応募者との信頼関係も築きやすくなるでしょう。

②出身地・宗教・思想など差別につながる情報

出身地や宗教、思想に関する調査は、雇用機会均等法の観点から禁止されています。これらの情報は業務適性と無関係であり、採用判断の基準にすることは不適切です。

かつては「出身地調査票」などが存在しましたが、現在は厚生労働省のガイドラインによって明確に禁止されています。

企業は無意識の偏見を排除し、応募者一人ひとりを公正に評価する姿勢が求められます。

③家族構成や婚姻歴などプライバシーに関わる情報

応募者の家族構成や婚姻歴は、業務能力や職務適性とは関係がありません。「結婚の有無」や「扶養家族の人数」などを質問・調査する行為は、プライバシー侵害にあたるおそれがあります。

特に女性のライフイベント(結婚・出産)に関する質問は、性差別的とみなされる可能性が高いです。

企業は応募者の私生活に踏み込まず、仕事の成果やスキルといった客観的な基準で評価することが大切でしょう。

④医療・健康に関する情報

健康状態や病歴といった医療情報も、採用時点では調べてはいけない項目です。厚生労働省は「障害者差別解消法」に基づき、病気や障害を理由にした差別を禁じています。

採用可否の判断に健康情報を使うことは、合理的配慮を欠く行為と見なされることがあります。

医療情報を扱う必要がある場合は、入社後の安全配慮義務の範囲に限定し、本人の明確な同意を得てから行うことが望ましいです。

⑤政治的・宗教的信条

応募者の政治的・宗教的信条に関する調査は、思想・信条の自由を侵害するおそれがあります。

支持政党や宗教団体への所属、社会運動への参加歴などを質問したり、SNS上の投稿から推測したりすることも避けるべきです。

これらは個人の人格的自由に関わる領域であり、採用基準に影響を与えることは倫理的にも問題があります。応募者の信条を尊重し、公正な採用判断を行ってください。

⑥違法な方法で取得した情報

探偵業者や外部調査会社に依頼する場合でも、違法な手段による情報収集は厳禁です。無断の盗聴・盗撮、戸籍や住民票の不正取得、なりすましなどは、個人情報保護法や刑法に抵触します。

違法な調査を依頼した企業も責任を問われる可能性があります。調査を依頼する際は、法令順守体制や調査範囲を事前に確認し、信頼できる業者を選ぶよう注意しましょう。

採用時の身辺調査の実施方法

採用時の身辺調査は、応募者の経歴や素行を確認して、採用リスクを減らす目的で行われます。

調査にはいくつかの方法があり、自社での実施から外部への委託まで幅広い選択肢があります。ここでは代表的な6つの方法を紹介します。

  1. 企業が自社で行う場合
  2. 探偵・興信所に依頼する場合
  3. リファレンスチェックサービスの活用
  4. バックグラウンドチェック会社の利用
  5. 調査対象範囲と項目の設定
  6. 調査結果の検証と報告の流れ

①企業が自社で行う場合

自社で身辺調査を行う場合は、コストを抑えながら情報を直接確認できる点が魅力です。履歴書や職務経歴書の内容を確認し、学歴・職歴・資格などを電話やメールで照会します。

公開されているSNS情報を参考にする企業もあります。ただし、調査の範囲を誤るとプライバシー侵害となるおそれがあるため、目的を明確にすることが欠かせません。

応募者の同意を得て、差別につながる情報を扱わないよう注意が必要です。最終的には、信頼できる一次情報に基づいて判断することが、採用の公平性を守る鍵となるでしょう。

②探偵・興信所に依頼する場合

探偵や興信所に依頼する場合は、自社では得にくい情報を専門的な手法で調査できます。特に、経歴詐称や反社会的勢力との関係の有無など、慎重な確認が必要なケースで活用されます。

ただし、調査範囲を誤ると違法になる可能性があります。個人の思想や家族構成、出身地といった情報を調べるのは避けましょう。依頼時には契約書を交わし、調査内容を明確にしておくことが重要です。

調査結果は採用判断の参考資料としてのみ利用し、差別的な判断に使わない姿勢が求められます。

③リファレンスチェックサービスの活用

リファレンスチェックサービスとは、候補者の前職上司や同僚など第三者から評価を得る仕組みです。

最近では「back check」などのオンラインサービスも普及し、短期間で信頼性の高い情報を得られるようになりました。書類や面接だけでは分からない働きぶりや人柄を確認できる点が大きな強みです。

ただし、質問内容が曖昧だと偏った回答になるおそれがあります。事前に質問項目を整理し、候補者にも同意を得たうえで実施しましょう。透明性の高い運用が信頼を保つポイントです。

④バックグラウンドチェック会社の利用

バックグラウンドチェック会社を利用すると、資格や経歴、犯罪歴などを包括的に確認できます。専門会社が法令を遵守しながら調査するため、個人情報保護の観点でも安心です。

海外では一般的なプロセスであり、近年は日本企業でも導入が進んでいます。利用時は調査範囲を明示し、候補者の同意を文書で取得することが必要です。

また、結果は社内の限られた関係者のみで扱い、外部に漏らさないよう管理を徹底してください。法的リスクを避けつつ、効率的に採用を進められる方法といえます。

⑤調査対象範囲と項目の設定

調査項目は職種や責任範囲によって異なります。一般的には「学歴」「職歴」「資格」「経済的信用」「反社会的勢力との関係」などが対象です。

ただし、業務に直接関係のない内容を調べるのは避けるべきです。営業職なら経済状況よりも顧客対応スキルや信頼性を重視したほうが実用的でしょう。

過剰な調査は個人情報保護法違反のリスクがあるため、社内でチェックリストを整え、法務・人事・コンプライアンス部門が連携して範囲を決めることが望ましいです。

目的を明確にし、調査の効率化を図りましょう。

⑥調査結果の検証と報告の流れ

調査結果は、入手した情報をそのまま信じるのではなく、再確認を行うことが欠かせません。内容に誤りがあると、不当な採用判断につながるおそれがあります。

確認の際は、卒業証明書や資格証明書、推薦書などの資料と照らし合わせるとよいでしょう。報告書を作成する際は、事実と意見を明確に分けて整理し、判断者が理解しやすい形にまとめます。

最終的には、リスク情報をどう活用するかを定め、透明性のある採用プロセスを築くことが重要です。

身辺調査を行う場合のポイント

企業が採用時に身辺調査を行う際は、法的リスクを避けながら適切に情報を扱うことが大切です。

調査の目的や範囲を明確にし、個人情報保護法やコンプライアンスを守ることで、応募者との信頼関係を損なわずに採用判断を進められるでしょう。

ここでは、実施時に押さえておきたい主要なポイントを紹介します。

  1. 本人の同意取得
  2. 調査項目の必要性の確認
  3. 調査結果の情報管理
  4. 調査のタイミング(内定前/内定後)
  5. 外部委託時の契約
  6. コンプライアンス対応
  7. 調査内容に基づく意思決定の留意点

①本人の同意取得

採用時の身辺調査では、応募者本人の同意を得ることが前提です。無断で個人情報を集める行為は、個人情報保護法に違反するおそれがあります。

たとえば前職への問い合わせやSNSの確認などを行う場合でも、本人の同意がなければ避けるべきです。同意を得る際は、調査の目的と範囲を明示し、必要最小限の情報に限定してください。

透明性を確保することで、企業の信頼性も高まります。

②調査項目の必要性の確認

調査項目は、採用判断に直接関係する内容に限ることが基本です。勤務態度や経歴の確認など業務適性に関わる情報は妥当ですが、家族構成や宗教・思想といった私的領域の調査は不適切です。

不要な項目を含めると、差別的な扱いと見なされるリスクがあります。調査を始める前に「業務上本当に必要か」を明確にし、目的と手段のバランスを意識しましょう。

③調査結果の情報管理

収集した情報は、社内で厳重に管理しなければなりません。調査結果を共有できる範囲は採用担当者など必要最低限の人に限り、他部署や第三者への漏えいを防ぐ体制が必要です。

また、調査が終わった段階で不要な情報は速やかに破棄し、保管期間やアクセス権限を明文化しておくと安心です。適切な管理体制を整えることで、万が一のトラブルを防げます。

④調査のタイミング(内定前/内定後)

身辺調査を行うタイミングは、採用フローの中での位置づけによって目的が変わります。内定前に行う場合は、採用可否の判断材料として法令順守を徹底する必要があります。

一方で、内定後に行う場合は、入社準備や誓約書の締結前に確認する目的となります。どちらのケースでも、事前に調査を行う旨を説明し、応募者の理解を得ることが大切です。

⑤外部委託時の契約

調査を外部に委託する場合は、契約内容を明確に定めることが欠かせません。委託先の選定基準を設け、個人情報の取り扱い体制を確認しましょう。

契約書には、目的・範囲・再委託の可否・秘密保持義務・事故発生時の責任分担などを明記してください。これにより、情報漏えいやトラブル発生時のリスクを抑えられます。

⑥コンプライアンス対応

身辺調査は、企業の法令遵守の姿勢が問われる領域です。個人情報保護法、労働基準法、職業安定法などの関連法を理解し、違反にならないよう注意が必要です。

また、社内で統一したガイドラインを作成することで、担当者ごとの判断のばらつきを防げます。法令と倫理の両面から、企業として誠実な対応を心がけましょう。

⑦調査内容に基づく意思決定の留意点

調査結果を採用判断に反映する際は、情報の正確性と妥当性を慎重に確認することが重要です。うわさや不確定な情報を根拠に判断すると、不当な不採用やトラブルにつながるおそれがあります。

判断に迷う場合は、複数の情報源を照らし合わせ、事実を確認したうえで総合的に判断してください。公平で客観的なプロセスを徹底することが、健全な採用活動の基盤となります。

身辺調査の費用相場

採用時の身辺調査は、目的や手法によって費用が大きく変わります。自社で行う場合と外部委託では、コスト構造や精度も異なるでしょう。

ここでは、企業が理解しておくべき代表的な費用項目と判断基準を整理して解説します。

  1. 企業が自社で行う場合のコスト
  2. 探偵・調査会社へ依頼する場合の料金目安
  3. バックグラウンドチェックサービスの料金比較
  4. 調査内容・範囲による価格変動要因
  5. 費用対効果の考え方
  6. コスト削減のための代替手段

①企業が自社で行う場合のコスト

自社で身辺調査を実施する場合、外部委託に比べて支出は少なく見えるかもしれません。しかし実際には、担当者の人件費や情報収集にかかる時間的コストが発生します。

SNSや公開情報を人事担当が手作業で確認する場合、1件あたりおよそ1〜2時間を要することもあります。時給換算では数千円規模の負担になるでしょう。

また、法的リスクを避けるための教育やチェック体制も欠かせません。結果的に単純なコスト削減にはつながらず、効率面では専門サービスの利用と大きな差がないことも多いです。

②探偵・調査会社へ依頼する場合の料金目安

探偵や興信所へ依頼する場合、料金は調査対象や期間によって変動します。一般的な個人調査は1件あたり5〜20万円が相場で、報告書や証拠写真の取得を含むとさらに高額になることもあります。

採用時に利用する企業は多くありませんが、経営幹部や重要ポジションの採用では例外的に使われるケースもあるでしょう。

ただし、調査目的が不当な差別やプライバシー侵害と見なされるおそれもあるため、慎重な判断が求められます。費用だけでなく、倫理的な適正性の観点からも検討する必要があります。

③バックグラウンドチェックサービスの料金比較

オンラインで完結するバックグラウンドチェックサービスは、1件あたり3,000〜10,000円が一般的です。

犯罪歴や経歴詐称、反社会的勢力の有無などを自動照合で確認でき、探偵会社より安価に利用できます。さらに法令遵守の体制が整っているため、企業のリスク管理手段として導入が進んでいます。

採用数が多い企業では、月額課金や件数割引プランを活用することでコストを抑えつつ、標準化された運用を実現できます。スピードと透明性を両立できる新しい選択肢といえるでしょう。

④調査内容・範囲による価格変動要因

費用の変動を左右するのは、調査の「深さ」と「広さ」です。経歴や資格確認のみなら低コストで済みますが、家族構成や人間関係、SNS発言など主観的情報を含める場合は高額になりやすいです。

さらに、対象地域が複数にまたがるケースや海外経験者の調査では、翻訳や現地調査費が追加されることもあります。

コストを抑えたい場合は、リスクの高い職種や役職に絞って重点的に行うとよいでしょう。調査範囲の優先順位を明確にすることがポイントです。

⑤費用対効果の考え方

身辺調査にかかる費用は単なる支出ではなく、採用ミスを防ぐ「保険料」と考えるのが適切です。

採用後の不祥事や信用失墜による損失を考えれば、数万円の調査費でリスクを回避できるのは大きな効果といえます。ただし、すべての候補者に実施するのは非効率でしょう。

重要なポジションやリスクの高い職種に限定して実施し、調査結果を採用判断の一要素として活用することが望ましいです。

費用対効果を検討する際は、「どれだけの安心を買うか」という視点を持つことが大切です。

⑥コスト削減のための代替手段

コストを抑えるには、調査の一部を自動化ツールやオープンデータで補う方法が有効です。

たとえば、SNSスクリーニングAIやオンライン資格照会サービスを併用すれば、調査会社への依頼回数を減らせます。

また、応募時に本人同意を得て経歴・資格情報を提出してもらう仕組みを導入すれば、確認作業の重複を防げるでしょう。

目的は単なるコスト削減ではなく、「調査品質を維持しながら合理化する」ことにあります。人事部門が定期的に見直しを行うことで、効率的で透明性の高い運用が実現します。

採用時の身辺調査を適切に活用するために

採用時の身辺調査は、企業にとってリスクマネジメントの重要な手段です。目的は、経歴詐称やコンプライアンス違反、反社会的勢力との関係といった潜在的リスクを未然に防ぐことにあります。

適切に実施すれば、採用後のトラブル防止や企業ブランドの保全につながるでしょう。一方で、本人の同意なく個人情報や思想信条を調べる行為は違法となるため、法令遵守が欠かせません。

近年では、探偵や興信所に加え、リファレンスチェックやバックグラウンドチェックサービスを活用する企業も増えています。

身辺調査を行う際は、目的・範囲・手法を明確にし、コストと効果のバランスを踏まえた適正な運用を心がけることが重要です。

  • フェイスブック
  • X

まずは志望動機を作ってみる

    • 卒業年数
    • 学校
    • 名前
    • 連絡先

    No.1

    卒業年月日を選択してください

    2027年3月2026年3月2028年3月2029年3月卒業済み

    例)
    現在、大学3年の場合は「2027年度3月」
    現在、大学4年の場合は「2026年度3月」
    現在、大学2年の場合は「2028年度3月」
    現在、大学1年の場合は「2029年度3月」

    No.2

    学校区分を選択してください

    大学大学院(博士)大学院(修士)短期大学専門学校

    No.2

    学校情報を入力してください

    学校名
    学部名
    学科名
    学校名
    学部名
    学科名

    No.3

    お名前を入力してください

    お名前
    フリガナ

    No.4

    連絡先を入力してください

    電話番号
    メールアドレス

    本利用規約には、株式会社C-mindが「https://shukatsu-magazine.com」上で提供するサービスにおける、本サービスを利用するお客様との間の基本的な事項が規定されております。本サービスの利用者におかれましては、必ず全文お読み下さいますようお願いいたします。

    個人情報保護方針」と 「サービス利用規約」を確認する

    編集部

    この記事を書いた人

    編集部

    「就活に苦しむ学生を減らしたい」をモットーに、志望動機やES、面接対策など、多種多様な就活の困りごとを解決するための記事を日々発信。700以上の記事で就活生の悩みに対処しつつ、就活の専門家であるキャリアアドバイザーの監修により、最後まで内定を狙える就活の方法を伝授し続けています。