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学芸員の平均年収はいくら?仕事内容とキャリア別に徹底解説

「歴史やアートに関わる仕事がしたい」「文化を後世に残す仕事に憧れる」そう思ったことがある人は多いのではないでしょうか。そんな思いを実現できる職業のひとつが、学芸員です。

一方で、「学芸員は年収が低い」「正職員になりにくい」という声も耳にします。実際のところ、学芸員の収入や働き方はどうなっているのでしょうか。

この記事では、学芸員の仕事内容や平均年収、やりがい、さらにはキャリアアップの方法まで詳しく解説します。

これから学芸員を目指す人も、すでに資格取得を考えている人も、ぜひ参考にしてください。

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目次

学芸員とは?

学芸員とは、博物館や美術館などで展示・資料の企画や研究、教育活動を行う専門職です。文化財や芸術作品に関わりながら、社会に知識や価値を伝える大切な役割を担っています。

ここでは、学芸員の基本的な定義や役割、学芸員補との違い、そして博物館内での立場について詳しく見ていきましょう。

  1. 学芸員の定義と役割
  2. 学芸員と学芸員補の違い
  3. 博物館や美術館での学芸員の位置づけ

①学芸員の定義と役割

学芸員とは、博物館法に基づき「資料の収集・保管・展示および調査研究を行う専門職」として定められています。

つまり、展示を作るだけではなく、文化財や作品を守りながら、その価値を人々に伝える重要な存在です。展示企画の立案や教育活動、研究発表など、業務は多岐にわたります。

学芸員の仕事は、表には見えない準備や調査の積み重ねによって支えられています。その努力が展示という形で社会に還元され、文化の継承と発展に貢献しているのです。

学芸員はまさに「学問と社会をつなぐ架け橋」といえるでしょう。

②学芸員と学芸員補の違い

学芸員補は、学芸員の補助的な業務を行う立場で、資格を持たない人が多い職種です。展示準備や資料整理など、現場の実務をサポートします。

一方、学芸員は国家資格を有し、資料管理や展示全体の責任を担います。学芸員補として経験を積みながら資格を取得し、正式な学芸員を目指す人も少なくありません。

就活生の方にとっては、まず学芸員補や臨時職員として現場を経験し、実際の仕事の流れを学ぶことが大きなステップとなるでしょう。

両者の違いを理解することで、将来のキャリアをより具体的に描きやすくなります。

③博物館や美術館での学芸員の位置づけ

学芸員は、博物館や美術館の中核を担う専門職です。館長や事務職員、教育担当者などと協力しながら、展示や研究の方針を決定します。

公立館では「研究・教育・地域連携」の要として文化行政に関わることもあり、社会的責任の大きい仕事といえるでしょう。一方で、私立美術館では企画運営や集客など、マネジメント能力も重視されます。

学芸員は、学術的な専門性だけでなく、社会とのつながりを意識した総合的な役割を果たしています。文化や芸術を通して地域社会に貢献したいと考える人にとって、非常にやりがいのある職業です。

学芸員の仕事内容

学芸員の仕事は、展示企画から資料の保存、研究、教育活動まで幅広く、知識だけでなく企画力や発信力も求められる専門職です。ここでは、学芸員の代表的な業務内容を6つに分けて紹介します。

現場での働き方を具体的に知ることで、自分に合った職務イメージを持ちやすくなるでしょう。

  1. 展示企画・運営業務
  2. 資料収集・整理・保存業務
  3. 研究・調査業務
  4. 教育普及・イベント企画業務
  5. 地域連携・広報業務
  6. 来館者対応・事務管理業務

①展示企画・運営業務

展示企画・運営業務は、学芸員の仕事の中でも最も中心的で、博物館や美術館の「顔」となる部分を担います

テーマの立案から展示構成、資料の選定、解説文の作成に至るまで、一連の流れを総合的に担当します。限られた空間や予算の中で、どのように来館者にストーリーを伝えるかを考える企画力が重要です。

展示は単なる並べ方ではなく、伝える順序や照明の当て方、動線設計、音響効果などの工夫が来館者の満足度を左右します。

また、展示期間中も修正や調整が発生することが多く、チームとの連携や柔軟な対応力も欠かせません

完成した展示を前に来館者が楽しそうに見学している姿を見る瞬間は、学芸員にとって大きな達成感を得られる時間です。

②資料収集・整理・保存業務

資料収集・整理・保存業務は、博物館活動の根幹を支える重要な仕事です。文化財や標本、芸術作品など、時代や地域を超えて受け継がれてきた貴重な資料を守る役割を担います。

単に保管するだけではなく、分類や目録作成、劣化防止のための温湿度・照度の管理、害虫対策など、きめ細やかな作業が日々求められるでしょう。

さらに、新しい資料を収集する際には、その文化的・学術的価値を見極め、所有者との交渉や寄贈の調整を行うこともあります。

表に出ることは少ない業務ですが、資料があるからこそ展示や研究が成立しています。細やかな注意力や粘り強さが問われる仕事ですが、未来へ文化を継承していくという強い使命感を持てる分野でもあります。

③研究・調査業務

研究・調査業務は、学芸員が専門家として社会に知を還元するための根幹的な役割です。収蔵資料や展示物を対象に調査・分析を行い、論文発表や講演、展示解説などを通じて成果を広く共有します。

時には未解明の資料や歴史的背景を解き明かすこともあり、新しい発見が博物館の評価を高めることにもつながっています。

研究は個人作業だけでなく、大学や他館との共同プロジェクト、海外の研究機関との連携など、幅広いネットワークの中で進められることも。

そのため、専門知識だけでなく、情報発信力や英語などの語学力、チームで成果を出す協働性も大切です。研究成果をわかりやすく一般の人に伝えることで、学問と社会の架け橋となるのが学芸員の魅力でしょう。

④教育普及・イベント企画業務

教育普及・イベント企画業務は、博物館や美術館が地域社会と深くつながるための柱のひとつです。来館者、特に子どもや学生に対して、文化や科学の魅力を体験的に学べるプログラムを提供します。

ワークショップや体験型展示、学校との連携授業などを通じて、学びの楽しさや創造の大切さを伝えています。また、大人向けには講演会や展示解説ツアーなどを企画し、幅広い層にアプローチします。

専門的な知識をかみ砕いて説明する力や、対象者に合わせて伝え方を変える柔軟さも欠かせません。教育普及は、知識の伝達だけでなく、人々の知的好奇心を育てる活動です。

直接反応を得られる仕事だからこそ、学芸員にとってやりがいを強く感じやすい分野といえるでしょう。

⑥地域連携・広報業務

地域連携・広報業務は、館を「地域の文化拠点」として機能させるために、欠かせない役割を果たしています

地域の学校・自治体・企業・NPOなどと協力し、地域の文化や産業と連動した展示やイベントを開催します。

これにより、地元住民の関心を高め、地域経済や観光にも貢献できます。また、SNSやウェブサイト、広報誌を通じて情報発信を行い、来館促進を図るのも重要な任務です。

近年は、オンライン展示やデジタルアーカイブの整備など、情報発信の形も多様化しています。こうした広報活動にはクリエイティブな発想と分析力が求められます。

地域文化の魅力を社会に広く伝え、持続可能な文化発展に寄与できることが、この業務の大きなやりがいです。

⑥来館者対応・事務管理業務

来館者対応・事務管理業務は、学芸員の仕事を陰で支える不可欠な業務です。受付や展示案内、問い合わせ対応、各種予約の調整などを行い、来館者が快適に過ごせる環境を整えます。

裏方としての事務業務では、予算管理、報告書や助成金申請書の作成、他機関との調整なども担当。これらの仕事は直接目立つことはありませんが、館の運営を支える土台となる大切な部分です。

小さなミスが全体の運営に影響するため、正確さと責任感が求められます。また、来館者や同僚との信頼関係を築くことが、円滑な運営のカギになるでしょう。

縁の下の力持ちとして館全体を支え、人と文化をつなぐ重要な役割を果たすのがこの仕事です。

学芸員の平均年収

学芸員の年収は、勤務先や雇用形態、地域、経験によって大きく変わります。文化や芸術に関わる仕事としての魅力がある一方で、収入面に不安を感じる学生も多いでしょう。

ここでは、厚生労働省の最新データをもとに、学芸員の平均年収や月収、勤務先・地域ごとの違いなどを詳しく解説します。数字を通して、現実的なキャリアの見通しを立てましょう。

  1. 最新統計データで見る平均年収
  2. 平均月収・時給換算ベースの目安
  3. 年齢・経験年数別で見る年収推移
  4. 勤務先別で見る年収の違い
  5. 地域別・都道府県別で見る年収の違い
  6. 雇用形態別で見る年収比較

①最新統計データで見る平均年収

学芸員の全国平均年収は、約591万円です。一般的な専門職の中でも、中堅クラスの水準といえます。男女差は少なく、安定した給与体系が特徴です。

ただし、この金額は正社員・契約職員・非常勤職員などを含めた平均値であり、勤務先や職務内容によって変動します。

公立の博物館では地方公務員として安定した給与を得られますが、私立館や契約職では年収が低くなる場合もあるでしょう。数字を把握し、現実的なキャリア計画を立てることが大切です。

②平均月収・時給換算ベースの目安

学芸員の月間所定労働時間は154時間で、年収591万円をもとにすると、月給に換算すると約37万円で、1時間あたりの賃金は約2,967円となります。

この数値にはボーナスや手当が含まれており、実際の勤務時間や残業の有無によって実質的な時給は変わります。

展示準備やイベント対応では休日出勤や長時間勤務が発生することもあり、単純に時間給だけで比較するのは難しいでしょう。

給与面を重視するよりも、「やりがい」と「安定性」のバランスを意識することが重要です。就職を考える際は、給与だけでなく労働環境全体を確認してください。

③年齢・経験年数別で見る年収推移

学芸員の年収は、経験や年齢に応じて段階的に上がっていきます。平均年齢42.7歳で591万円という数値からもわかるように、中堅層が全体の平均を押し上げている傾向があるようです。

20代では350万円前後、30代で400万円前後、40代以降で500万円を超えるケースもあります。ただし、昇給幅は大きくないため、資格の取得や研究実績の積み重ねが昇給のカギになるでしょう。

特に、主任学芸員や学芸課長などの役職に就くと、年収600万円を超えることもあります。経験を重ねて専門性を磨くことが、安定した収入につながるでしょう。

④勤務先別で見る年収の違い

勤務先によって年収には大きな差があります。公立の博物館や美術館では、公務員として採用されることが多く、年収は400万〜600万円程度で安定しています。

大学附属館は研究業務が多く、給与がやや高めに設定される傾向です。一方、私立館や企業系美術館では、財団の規模や予算によって給与が変わります。

中小規模の館では、300万円台後半にとどまる場合もあるでしょう。就活の際には、運営母体の財政状況や昇給制度、福利厚生の内容まで確認しておくことが大切です。

⑤地域別・都道府県別で見る年収の違い

地域によっても、学芸員の年収は異なります。東京都や大阪府などの都市部では、平均年収が全国平均を上回り、約600万円前後です。生活コストが高い分、給与もやや高めに設定されています。

一方、地方の博物館では年収350万〜400万円程度が一般的ですが、自治体によっては地域手当や住宅補助が支給されることもあります。

生活費を考慮すれば、実質的な生活水準は都市部と大きく変わらない場合もあるでしょう。勤務地を選ぶ際は、給与だけでなく生活環境も考慮してください。

⑥雇用形態別で見る年収比較

学芸員の雇用形態別の割合を見ると、正規職員が約69.4%、契約職員が約26.5%、パート・非常勤職員が約20.4%です。正規職員は賞与や昇給制度が適用され、年収も安定しやすい傾向にあります。

一方、契約職員や非常勤の場合は年収250万〜300万円程度となるケースが多く、長期的な安定性に欠ける点が課題です。

ただし、現場での実績や専門知識の評価によって、正規登用のチャンスを得られる場合もあります。経験を積みながらキャリアを広げる姿勢が大切です。

引用:職業情報提供サイト(job tag)

学芸員の年収が低いといわれる理由

学芸員の仕事は専門性が高く、社会的にも大切な役割を担っていますが、「年収が低い」といわれることも少なくありません。

なぜそのような状況になるのかを理解することで、今後のキャリア設計にも役立ちます。ここでは、学芸員の給与水準が低くなりやすい背景を4つの視点から解説しています。

  1. 非正規雇用や臨時職員が多いため
  2. 求人や採用枠が少なく競争が激しいため
  3. 博物館・美術館の運営母体による給与差があるため
  4. 文化行政の予算規模の影響によるため

①非正規雇用や臨時職員が多いため

学芸員の職場では、正規職員よりも非正規雇用が多いことが年収の低さに直結しています。

博物館や美術館の多くは自治体や財団が運営しており、限られた予算の中で運営を行うため、臨時職員や契約職員の採用に頼らざるを得ない現状があります。

正規職員であれば年収400万〜600万円ほどが目安ですが、非常勤や嘱託職員では200万円台にとどまるケースが多く、社会保険やボーナスがない場合もあるでしょう。

また、任期付きの契約が一般的で、1〜3年ごとに更新の判断を受けることが多いため、安定的な生活設計を立てにくいのが実情です。

②求人や採用枠が少なく競争が激しいため

学芸員の採用は全国的に募集枠が限られており、1つのポストをめぐる競争が非常に激しいのが特徴です。

博物館や美術館の数自体が多くないうえに、職員の入れ替わりも少ないため、新規採用の機会は限られています。

1つの募集に数十人から数百人が応募するケースもあり、採用倍率が100倍を超えることも珍しくありません。

そのため、大学で学芸員資格を取得した後も、非常勤職員や学芸員補として数年経験を積んでから正規職員を目指す人が多くなっています。

③博物館・美術館の運営母体による給与差があるため

学芸員の給与水準は、勤務先の運営母体によって大きく左右されます。公立館であれば地方公務員として採用されるケースが多く、年収400万〜600万円前後と比較的安定しています。

これに対し、私立館や財団法人、大学附属の施設などでは、予算規模や資金源に差があるため、年収300万円台、場合によっては200万円台後半にとどまることもあります。

また、同じ公立館でも都市部と地方では予算配分や人件費に違いがあり、地域によって給与水準が変わるのも特徴です。

さらに、昇給制度や賞与の有無、退職金制度の有無など、勤務先による待遇差も無視できません。

こうした点を踏まえると、就職活動の際には「雇用の安定性」「昇進制度」「福利厚生」なども含めて比較検討することが重要です。単に年収額だけでなく、働きやすさや将来性を見極める視点が求められます。

④文化行政の予算規模の影響によるため

学芸員の給与には、国や自治体の文化行政の予算規模が深く関係しています。

日本では文化・芸術関連の予算が、国家予算全体に占める割合が約0.1%前後と低く、欧米諸国と比較しても支援体制が十分ではありません。

そのため、博物館や美術館の運営資金が限られ、施設の維持費や展示費用に多くの予算が割かれる結果、人件費が後回しにされやすい傾向にあります。

また、景気や自治体の財政状況によっても、職員給与の改定や募集数が左右されるため、安定した給与上昇が見込みにくいのが現状です。

学芸員になるには

学芸員を目指すには、専門的な知識や資格が必要です。学芸員は、文化財や資料を扱う専門職であり、大学での学びや実務経験が大きく関係します。

ここでは、学芸員になるための具体的なルートを3つのステップに分けて紹介しましょう。

  1. 大学で学芸員課程を履修して資格を取得する
  2. 文部科学省の学芸員資格認定試験に合格して資格を取得する
  3. 学芸員補・非常勤職員として経験を積む

①大学で学芸員課程を履修して資格を取得する

学芸員になるための最も一般的な方法は、大学で学芸員課程を履修することです。文部科学省が定めたカリキュラムに沿って、博物館学・文化財学・考古学などの科目を学びます。

必要な単位を修得すれば、大学卒業と同時に「学芸員資格」を得られます。多くの大学では、文学部・教育学部・芸術学部などにこの課程が設けられています。

資格を取得するには、理論だけでなく博物館での実習も求められます。学芸員を目指すなら、早めに履修計画を立てておくことが大切です。

②文部科学省の学芸員資格認定試験に合格して資格を取得する

すでに大学を卒業している人や、学芸員課程を履修していない人は、文部科学省の「学芸員資格認定試験」に合格することで資格の取得が可能です。

この試験では、博物館学や美術史、考古学などの専門知識が問われます。受験資格には、実務経験が必要な場合もあり、難易度は高めです。

しかし、社会人になってから学芸員を目指す人にとっては、再チャレンジの手段になるでしょう。

独学や通信講座を活用すれば、働きながらでも十分に合格を目指せます。自分の状況に合わせて無理のない方法を選んでください。

③学芸員補・非常勤職員として経験を積む

学芸員資格を取得しても、すぐに正規職員として採用されるとは限りません。多くの人がまずは「学芸員補」や「非常勤職員」として現場経験を積んでいます

展示準備や資料整理、来館者対応などを通して、実践的なスキルを身につけていく流れです。この経験は、正規採用を目指す際に大きな強みとなります。

また、地域の博物館や大学附属施設で働くことで、研究実績を積むチャンスにもつながるでしょう。経験を重ねながら専門性を高めることが、キャリアアップへの確実な一歩です。

学芸員に求められる資質・能力

学芸員は、文化や芸術、歴史などを守り、次の世代へ伝える大切な役割を担っています。そのため、専門知識だけでなく、多様な能力が必要です。

ここでは、学芸員として活躍するために欠かせない4つの資質とスキルを紹介します。

  1. 専門分野に対する探求心と研究能力
  2. 幅広い知識と柔軟な対応力
  3. コミュニケーション力と発信力
  4. 資料保存・展示運営に関する実務スキル

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①専門分野に対する探求心と研究能力

学芸員の仕事の中心は「研究」です。文化財や資料の価値を深く理解し、その背景や意味を明らかにするためには、強い探求心と継続的な分析力が欠かせません。

美術史・考古学・民俗学・自然科学など、それぞれの専門分野を深く掘り下げる努力が求められます。

単に知識を蓄積するだけではなく、自らの研究を展示や論文、講演といった形で社会に還元し、来館者の知的好奇心を刺激することが重要です。

特に学芸員は、日々新たな発見や資料の解釈に触れる立場にあるため、学び続ける姿勢が不可欠です。研究への情熱と探究心を持ち続けることこそが、信頼される専門家として成長する最大のカギといえるでしょう。

②幅広い知識と柔軟な対応力

学芸員は、自身の専門分野にとどまらず、歴史・芸術・科学・教育など、さまざまな分野にまたがる知識を求められます

博物館や美術館では、来館者の年齢層や関心が多様であるため、一方的な説明ではなく、相手に合わせた伝え方が大切です。

また、展示企画の現場では、アーティストや教育関係者、研究者など異なる立場の人々と協力してプロジェクトを進めることもあります。

そのため、他者の意見を柔軟に取り入れ、状況に応じて対応を変える力が欠かせません。多角的な視点を持ち、広い分野に興味を持って学び続けることで、展示内容の質も深みを増していきます。

柔軟な発想と幅広い教養が、来館者に新しい発見を与える魅力的な展示づくりにつながるのです。

③コミュニケーション力と発信力

学芸員は、専門知識を「伝える」職業でもあります。来館者への展示解説や講演会、SNSや広報誌など、情報を発信する機会が多く、わかりやすく魅力的に伝える発信力が求められるでしょう。

また、博物館・美術館の運営には、教育担当者、デザイナー、研究者、行政など多くの人が関わっており、チームワークを円滑にするコミュニケーション能力も不可欠です。

専門用語を使いすぎず、一般の人にも伝わる表現を意識することで、理解と共感を得やすくなります。さらに、最近ではSNSやオンライン講座など、デジタルを活用した情報発信のスキルも重視されています。

人と人、知識と社会をつなぐ架け橋となる意識を持つことが、学芸員としての信頼を高める第一歩です。

④資料保存・展示運営に関する実務スキル

学芸員の仕事は、研究や展示だけでなく、資料を守り活かす「実務スキル」も重要です。

文化財や標本を長期的に保存するためには、温湿度の管理や光量調整、カビ・害虫の防止など、科学的な知識と繊細な感覚が求められます

また、展示を行う際には、構成・照明・導線・安全性を考慮した空間設計を行い、限られたスペースの中で来館者が快適に鑑賞できる工夫が必要です。

さらに、展示会の準備では運搬業者・デザイナー・広報担当など、多くの関係者との調整力が問われます。これらのスキルは机上の学びだけでは身につかず、現場での経験を重ねて初めて培われるものです。

学生のうちからインターンやボランティアに参加し、現場の流れや作業を体感しておくことで、将来大きな強みになるでしょう。

学芸員に向いている人の特徴

学芸員の仕事は、文化財や芸術作品の調査・展示・保存など、多岐にわたります。専門知識だけでなく、粘り強さや協調性も欠かせません。ここでは、学芸員に向いている人の特徴を4つの視点から紹介します。

  1. 知識を深めることが好きな人
  2. 地道な作業や研究を楽しめる人
  3. チームでの協働が得意な人
  4. 文化や芸術の価値を伝えたい人

①知識を深めることが好きな人

学芸員は、日々の業務の中で新しい知識や発見に触れることが多い職業です。展示資料や作品の背景を丁寧に調べ、信頼性の高い情報を来館者へ伝えるためには、強い知的好奇心と探究心が欠かせません。

学問的な興味を持ち、自らの専門分野を掘り下げながら新しい視点を得ることを楽しめる人に向いています。

また、展示企画や研究テーマの立案では、関連分野の知識や他分野とのつながりを理解する姿勢も必要です。

興味を持ったことを追求し、それを形にして人々と共有できる喜びが、学芸員という仕事の醍醐味でしょう。学び続けることに喜びを感じられる人こそ、この仕事に適しています。

②地道な作業や研究を楽しめる人

学芸員の仕事は、一見華やかに見えますが、実際には長期的で地道な作業の積み重ねが中心です。

資料の整理・目録作成・保存処理といった裏方の仕事が多く、1つひとつの作業を正確にこなす根気強さが求められます。

研究においても、数年単位での調査や分析を続けることがあり、すぐに成果が出るとは限りません。そのため、途中経過を楽しみながら、粘り強く努力を続けられる人が向いています。

細かい作業を丁寧に積み重ねる中で、小さな発見が大きな成果につながることも少なくありません。結果だけでなく「過程を楽しめる」タイプの人が、学芸員として着実に成長していけるでしょう。

③チームでの協働が得意な人

学芸員の仕事は、個人の研究活動にとどまらず、多くの人との協働によって支えられています

展示やイベントの企画運営では、他の学芸員、デザイナー、学芸補助員、広報担当者など、異なる専門分野の人々と意見をすり合わせながら進めていく必要があります。

そのため、相手の意見を尊重しながら、自分の考えを伝えられる柔軟なコミュニケーション力が欠かせません。

また、行政機関や教育機関、外部の研究者などと連携する機会も多く、スケジュール調整や役割分担の調整力も重要です。

個人の専門性を発揮しながらも、チーム全体で成果を生み出すことに喜びを感じられる人にとって、学芸員は非常にやりがいのある職業でしょう。

④文化や芸術の価値を伝えたい人

学芸員は、文化や芸術の魅力を社会へ広める架け橋となる存在です。展示や講演、ワークショップなどを通じて、来館者に新しい学びや感動を提供する使命があります。

そのためには、専門的な内容を一般の人にも、わかりやすく伝える表現力や発信力が必要です。

単に知識を教えるだけでなく、「文化をどう伝えるか」「どのように興味を持ってもらうか」を考えながら工夫できる人に向いています。

また、文化財や芸術作品を未来へ受け継ぐためには、強い責任感と倫理観も求められます。人々に感動を与え、文化を次の世代へつなぐ意識を持てる人こそ、学芸員として長く社会に貢献できるでしょう。

学芸員の魅力

学芸員は、文化や芸術、歴史を守りながら社会に貢献できる仕事です。研究者としての探求心を満たしつつ、人々に新たな発見や感動を届けられるのが大きな特徴といえるでしょう。

ここでは、学芸員という職業の魅力を5つの観点から紹介します。

  1. 学問的探求を通じて社会に貢献できる
  2. 文化財や芸術作品に直接関われる
  3. 来館者との交流を通じて喜びを得られる
  4. 長期的なキャリアで専門性を深められる
  5. 年収以上に「好きなことを仕事にできる」充実感を得られる

①学問的探求を通じて社会に貢献できる

学芸員は、自分の専門分野を深めながら社会へ知識を還元できる、非常に意義のある職業です。日々の研究を通じて新しい知見を発見し、その成果を展示や講演、書籍、論文などで発信します。

自らの研究が社会の理解を深め、人々に新しい視点や学びを提供できることは、大きな達成感につながるでしょう。また、研究は個人のためだけでなく、文化や歴史の継承、地域社会の発展にも貢献します。

専門性を生かして社会に還元できる点は、学芸員ならではの魅力といえるでしょう。探究心を持ちながら、人の役に立つ実感を得られるこの仕事は、知的好奇心と社会的使命感の両方を満たしてくれます。

②文化財や芸術作品に直接関われる

学芸員の大きな魅力のひとつは、文化財や芸術作品を「直接」扱えることです。展示準備、修復、保存作業、資料の調査といった業務を通して、貴重な文化資産を未来に残す役割を担います。

時には数百年前の美術品や考古資料に触れることもあり、歴史と向き合う瞬間の重みを実感できるでしょう。

また、作品の価値をより多くの人に伝えるために、展示構成や解説文、照明などを工夫するクリエイティブな要素も求められます。

芸術や文化への理解を深めつつ、自分の手でその魅力を社会へ発信できるのは、この職業ならではの喜びです。本物に触れる日々の中で、自らの感性も磨かれていくでしょう。

③来館者との交流を通じて喜びを得られる

学芸員は、展示やイベントを通して、来館者と直接関わる機会が多い仕事です。展示解説や講演、ワークショップなどを通じて、訪れた人に学びや感動を届けます。

自分が企画・監修した展示をきっかけに、子どもたちが歴史や芸術に興味を持つ瞬間に立ち会えるのは、何よりの喜びでしょう。

来館者から「また来たい」「新しい発見があった」といった声をもらうと、自分の仕事が社会に影響を与えている実感を得られるはずです。

さらに、多様な世代や文化的背景を持つ人々と接する中で、自分自身の視野や価値観も広がります。人と関わることが好きで、誰かに知識や感動を届けたいと考える人にとって、非常にやりがいのある職業です。

④長期的なキャリアで専門性を深められる

学芸員は、経験を積むほどに専門性を高められる職業です。

最初は、展示補助や資料整理などの業務から始まりますが、知識と実績を重ねることで、研究発表や展示監修、チームマネジメントといった重要な役割を担えるようになります。

また、大学や研究機関との共同研究、海外の美術館との連携など、キャリアの選択肢も豊富です。短期間で結果を求める仕事ではないため、長く続けるほどに成長と達成感を感じられます。

さらに、自分の研究テーマを深めながら後進を育てる立場に立つことも可能です。学芸員のキャリアは一朝一夕で築けませんが、その分だけ深い専門性と信頼を得られる、積み重ね型の仕事といえるでしょう。

⑤年収以上に「好きなことを仕事にできる」充実感を得られる

学芸員の年収は、ほかの職種と比べると高くはないかもしれませんが、「自分の好きなことを仕事にできる」充実感があります。

文化や芸術に情熱を注ぎ、それを社会に伝える活動を通して、日々の仕事にやりがいを感じられるのが魅力です。

研究や展示を通して人々に感動を与えたり、地域文化の保存に貢献したりと、自分の仕事が社会の価値創造につながる実感を得られます。

また、文化的使命を担う立場として、金銭的な報酬以上の誇りを感じる人も多いです。好きな分野で専門性を発揮しながら、社会に貢献できるという点で、学芸員は「理想を形にできる仕事」といえるでしょう。

学芸員が年収を上げる方法

学芸員は専門性の高い仕事ですが、基本給が低めなため「どのように年収を上げられるか」を気にする人も多いでしょう。

ここでは、キャリアアップやスキルの磨き方によって、収入を上げる4つの方法を紹介します。

  1. 学芸員資格に加えて関連資格を取得する
  2. 専門性を高めて管理職・研究職を目指す
  3. 副業・講師・執筆などで収入源を増やす
  4. 展示企画・文化イベントの外部委託案件に参画する

①学芸員資格に加えて関連資格を取得する

学芸員として収入を上げたい場合、学芸員資格に加えて関連資格を取得するのは非常に効果的です。

たとえば、文化財保護や博物館運営、美術鑑定、アートマネジメントなどの専門資格を持つことで、採用や昇進の際に優遇されるケースがあります。

特に公立館では、資格取得者に対して職務手当が付く場合もあるでしょう。また、教育関連のキャリアを視野に入れるなら教員免許、展示演出や照明設計などに携わるなら空間デザイン系資格なども有利です。

こうした資格は専門性を客観的に示す「実績」として評価されやすく、担当できる業務の幅が広がるため、キャリアの選択肢も増えます。

日々の学びを重ねながら資格を取得することで、自信と収入の両方を手にできるでしょう。

②専門性を高めて管理職・研究職を目指す

学芸員としての経験を積み、専門性を高めていくことで、管理職や研究職への道が開けるでしょう。

国立や公立の博物館・美術館では、主任学芸員や学芸課長などの職位に昇進することで、年収が100万円以上上がることもあります。

昇進には、展示企画の実績や研究発表、論文執筆などが大きく関わっています。

また、大学や研究機関との共同研究プロジェクトに参加したり、学会発表を重ねたりすることで、専門家としての評価も高まるでしょう。

こうした努力が、より高い職責や報酬へとつながっていきます。短期的な成果よりも、地道に研究と実務を積み重ねて信頼を得ることが重要です。

専門家としての地位を確立することが、安定した収入と充実したキャリアを実現する近道といえるでしょう。

③副業・講師・執筆などで収入源を増やす

学芸員は、専門知識を活かした副業によって、安定した収入に加えてプラスアルファを得ることが可能です。

代表的なのは、大学やカルチャーセンターでの非常勤講師、専門誌や図録への寄稿、展覧会のカタログ執筆などでしょう。これらの活動は、自身の研究成果を社会に発信しながら、追加の収入を得られる点が魅力です。

また、講演活動やメディア出演などに発展することもあり、知名度や信頼性の向上にもつながっています。

副業は本業に支障をきたさない範囲で取り組むことが前提ですが、ネットワークの拡大や新しいプロジェクト参加のきっかけになることもあります。

自分の専門分野を社会に広げる手段として、副業を上手に活用することで、キャリアの幅と収入の両方を伸ばしていけるでしょう。

④展示企画・文化イベントの外部委託案件に参画する

展示企画や文化イベントの外部委託案件に参画するのも、収入アップを狙ううえで効果的な方法です。

自治体や企業、教育機関、NPOなどが主催する展示やイベントでは、専門的な監修や企画運営に携われる機会が多くあります。

学芸員として得た知識や経験を活かし、展示解説の監修やワークショップの企画運営を請け負えば、1件あたり数万円から数十万円の報酬を得ることも可能です。

さらに、こうしたプロジェクトは実績として評価され、次の案件や講演依頼へとつながる場合もあります。自館の仕事以外でも、文化を発信する場に関わることで、スキルアップと収入増の両立が可能です。

学芸員のキャリアパスと将来性

学芸員は、専門知識を活かして文化や歴史を支える仕事です。初任給は高くありませんが、経験を重ねることで多様なキャリアを築けます。

ここでは、学芸員としての代表的なキャリアパスと将来性について紹介しましょう。

  1. 学芸員から館長へのキャリアアップ
  2. 大学・研究機関・文化庁などへの転職パス
  3. 民間企業や国際機関での活躍の可能性
  4. 博物館業界の今後の動向と将来展望

①学芸員から館長へのキャリアアップ

学芸員としての経験を積み重ねることで、将来的には館長や管理職へとキャリアアップする道が開けるでしょう。

特に、国立や公立の博物館では、展示企画や研究成果、地域連携活動などが評価され、昇進につながるケースが多く見られます。

主任学芸員や学芸課長を経て館長へと昇格するまでには長い年月がかかりますが、その分、培った専門知識とマネジメント力を最大限に発揮できるポジションです。

館長クラスになると、年収700万円前後、施設規模によっては800万円を超える場合もあります

②大学・研究機関・文化庁などへの転職パス

学芸員としての専門性や経験は、大学、研究機関、さらには文化庁などの行政機関でも高く評価されます。

特に、歴史学・考古学・美術史・民俗学などの分野で研究実績を持つ人は、大学講師や准教授として教育・研究に携わるケースもあるでしょう。

また、文化庁や地方自治体の文化政策部門に転職し、文化財保護や博物館行政の企画・運営に関わることも可能です。

こうした職場では、研究力だけでなく、政策的な視点や組織間調整力、プレゼンテーション能力などが求められます。

さらに、研究者として学術界に貢献するだけでなく、文化行政を通じて社会全体の文化振興に関われる点も魅力です。

③民間企業や国際機関での活躍の可能性

学芸員の知識と経験は、博物館や美術館だけにとどまりません。民間企業や国際機関でも、そのスキルを活かせます

たとえば、出版社やアート関連企業、広告代理店などでは、展覧会の企画監修や文化プロジェクトのプロデュース、広報・編集業務などに携わることがあるでしょう。

また、近年ではユネスコ(UNESCO)や国際博物館会議(ICOM)などの国際的な文化機関で、日本文化の発信や国際共同研究を行う専門職として働く人も増えています。

英語力や異文化理解を身につけることで、海外との交流事業や文化外交の分野にも活躍の場が広がるでしょう。

④博物館業界の今後の動向と将来展望

博物館業界は、デジタル化や多様化が急速に進む中で、新しい転換期を迎えています

オンライン展示やデジタルアーカイブ、VR・AR技術の導入などが進み、学芸員にもデジタルリテラシーや発信力が求められるようになりました。

また、地域創生の観点から、博物館が教育機関や企業、地域コミュニティと連携する機会も増えています。

これにより、従来の「展示・保存」中心の役割から、「地域と共に文化を創造する拠点」としての役割が拡大しています。

学芸員という仕事の価値とこれからの展望

学芸員は、文化や歴史を次世代へ伝える重要な役割を担う専門職です。年収は、平均で約400万円前後とされていますが、職場や雇用形態によって差があります。

非正規雇用の割合が高いことや、文化予算の制約が影響して「年収が低い」と感じる人も少なくありません。しかし、展示企画や研究、教育普及など幅広い業務を通じて社会に貢献できる点は大きな魅力です。

さらに、専門性を高めることで館長や研究職へのキャリアアップ、副業や講師活動による収入増加も期待できます。

博物館業界はデジタル化の波を受けて新たな発展期を迎えており、今後は情報発信力や企画力を備えた学芸員が求められるでしょう。

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    「就活に苦しむ学生を減らしたい」をモットーに、志望動機やES、面接対策など、多種多様な就活の困りごとを解決するための記事を日々発信。700以上の記事で就活生の悩みに対処しつつ、就活の専門家であるキャリアアドバイザーの監修により、最後まで内定を狙える就活の方法を伝授し続けています。